第2回 そもそも論~どうして出版翻訳家になりたいの?
まずは、「そもそも論」からしておきましょう。この質問に答えてくださいね。
「あなたは、どうして出版翻訳家になりたいの?」
たとえば、「自分が翻訳したい原書が具体的にある」ということなら、それをどうやって出版につなげていくか、現実的に考えていくことができます。
あるいは「語学が好きだから語学を活かした仕事につきたい」ということなら、出版翻訳でなくても、映像翻訳や産業翻訳、もしくは通訳など他にもいろいろな選択肢があります。なぜ出版翻訳なのかを考えてみることで、自分のやりたいことが明確になるでしょう。
または「本が好きなので自分の名前の載った本を出したい」ということなら、翻訳よりも出版に惹かれているということになります。それなら、自分でも気づいていないけれど、翻訳ではなく自分の本を出したいという願望があるのかもしれません。
中には漠然と憧れている人もいるでしょう。それなら、翻訳の勉強よりもまず先にするべきことは、いったい何に憧れているのかを探ることです。
本を出すことで世の中に認められたいという動機もあるかもしれません。「そんな動機は不純だ」なんて否定するつもりはありませんし、その気持ちをバネにがんばれるのならいいと思います。ただ、「自分は世の中に認められていないと感じているんだな。だからこうして認められたいんだな」と自分の承認欲求に気づいておくことが大切です。あなたが本当に求めているのは、出版翻訳家になることではなく、人に認めてもらうこと。出版翻訳家は、そのためのひとつの手段なのでしょう。だけど手段にするには、なかなかに大変なことです。どうして承認欲求が満たされていないのか、そこに向き合うことのほうが、あなたにとってはきっと大事な問題のはずですよ。
たまにですが、「印税でもうけたいんです!」という人もいます(笑)。たしかに、手がけた本がヒットして結果的にお金もうけにつながることはあります。だけど一冊の本を世の中に送り出すというのは、本当に心身ともに消耗するものです。「もう、私、発狂しちゃうんじゃないかしら!?」というくらい追い込まれることもあります。お金もうけをモチベーションにして乗り切れる仕事ではないと思います。もっと手っ取り早い方法はきっとたくさんあるでしょう(笑)
さて、あなたはどのタイプに当てはまりましたか?
「あなたは、どうして出版翻訳家になりたいの?」
この質問の答えを、次回の連載までにぜひゆっくり考えてみてください。