TRANSLATION

しっかりした翻訳業者を見抜くために聞くべき質問11選 (9の質問と2つの観点)

ハイキャリア編集部

教えて!翻訳のこと

目次

  1. 担当コーディネーターがいるか
  2. 専門分野のリソースがいるか
  3. 無料トライアルがあるか
  4. 資料の使用目的について聞かれるか(※質問されるかどうか)
  5. 用語集・参考資料・スタイルガイドの有無について聞かれるか(※質問されるかどうか)
  6. 短納期の案件に対応可能かどうか
  7. ネイティブチェックがあるかどうか
  8. レイアウト調整をしてくれるかどうか
  9. 誤訳・訳抜け(修正)についてのアフターケアがあるかどうか
  10. 翻訳の後工程(DTP・字幕焼き付けなど)に対応可能かどうか
  11. 国際規格ISO27001(情報セキュリティ)とISO17100(翻訳品質保証)を取得しているか

日本国内には業界最大手から個人で運営している業者まで数多くの翻訳会社が存在しますが、どうすればしっかりした翻訳業者を見抜くことができるのでしょうか?翻訳業者の選び方を誤ると、品質が低い翻訳が納品されたり、納期の遅延や予期せぬ追加費用が発生する恐れがあるので、注意が必要です。

20年に及ぶ翻訳サービスの豊富な経験を持つテンナイン・コミュニケーションが、しっかりした翻訳業者を見抜くために聞くべき質問11選 (9の質問と2つの観点)について解説します。

読み終わる頃には、長期的に信頼関係を築くことができる翻訳業者の見抜き方が具体的にイメージできるようになっているでしょう。

しっかりした翻訳業者を見抜くためには、以下の質問11選 (9の質問と2つの観点)について検討対象の翻訳業者に問い合わせてみましょう。

1.担当コーディネーターがいるか

翻訳の作業はチームワークです。原稿の入稿から最終版の翻訳が完成するまで、希望の【納期・品質・コスト】に対して最適な方法で作業を進めていく必要があり、そのためには依頼者と翻訳チーム(翻訳者とチェッカー)の橋渡しとなる案件専属のコーディネーターの存在が不可欠となります。自社の案件に対して担当者となるコーディネーターがいるのか、またその人の経験年数や実績について問い合わせましょう。

自社の翻訳を長期的に依頼する場合は、担当コーディネーターと密にコミュニケーションを取る必要があります。担当コーディネーターはフィードバックを取り入れながら、過去の蓄積してきた資料とバラツキが生じないように用語やスタイルの統一を行い、各案件に最適な翻訳者をアサインして進めていきます。そのため、担当コーディネーターが俯瞰的に全ての案件を把握、管理して、場合によっては翻訳を進める上での改善策を提案することもあります。

「良い翻訳」を仕上げるためには、翻訳者の力量もさることながら、「コーディネーターの力量」に左右されることが大いにあるのです。

2.専門分野のリソースがいるか

依頼を検討している文書の内容が専門的な場合、その分野を専門としている翻訳者がいるかどうか問い合わせましょう。分野ごとに、独特な言葉遣いや用語が存在しますので、それらを原文の業界関係者が読んで違和感のない文章に仕上げる必要があります。翻訳者もあらゆる分野を一人でこなしている訳ではなく、ほぼ全ての翻訳者が2~3の専門分野を持ち、その分野に特化して案件を引き受けています。

専門分野のリソースがいるかの確認と共に、具体的な実績例についても問い合わせておくとなお良いでしょう。

3.無料トライアルがあるか

初めてその翻訳業者に依頼する際には、必ず最初に翻訳トライアルを実施して品質を事前に確認する必要があります。無料翻訳トライアルがあるか問い合わせましょう。英語→日本語の【英日翻訳】であれば、原文200ワード程度、日本語→英語の日英翻訳であれば、原文300文字程度が平均的な無料トライアルの分量となります。良い翻訳会社であれば、2-3名分の翻訳者の訳文の提出があるでしょう。言葉のセンスやスタイルは翻訳者によって分かれるので、数名分を比較して、どの翻訳者の訳文が自社の求めている言葉の雰囲気や好みに合っていたか伝えましょう。

注意点としては、翻訳会社によっては「トライアル時のみ優秀な翻訳者をアサインする」ことがあります。トライアル後に、実際の案件にもトライアルを担当した翻訳者を指名できるか確認してください。

4.資料の使用目的について聞かれるか(※質問されるかどうか)

ここから二つは「問い合わせる」のではなく、翻訳業者の担当者から「質問があるかどうか」でしっかりした業者であるか見極めましょう。

一つ目は「翻訳対象資料の使用目的について聞かれるか」です。翻訳を行う上で重要になってくるのは「翻訳の目的・ターゲットオーディエンス」であり、「誰に向けて書かれている」「何のため」の資料なのかを把握することで、訳文のスタイルが決まっていきます。

例えば自動車メーカー様の例ですと、その資料が社内の社員向けなのか、販売ディーラー向けなのか、お客様向けなのか、それともメディア向けなのか。ターゲットオーディエンスによって、一つの文章でも訳し方が若干異なります。

そのため翻訳の品質を担保するには担当コーディネーターが「資料の使用目的」をしっかりと把握して、案件調整を進める必要があります。「資料の使用目的」について担当者から確認が入るかどうかで、良い翻訳業者か見極めることができます。

5.用語集・参考資料・スタイルガイドの有無について聞かれるか(※質問されるかどうか)

4.と同様に「質問があるかどうか」を確認すべき項目となります。前述で「翻訳はチームワークである」と述べましたが、良い翻訳に仕上げるためには、依頼者(あなた)の協力も必要不可欠となります。翻訳者は外国語や外国文化に対して幅広い知識を持っていますが、あなたの会社の商品やサービス、業界に関する知識をあなた以上に持っているとは限りません。特に専門性が高い分野であれば尚更です。

翻訳対象文書に専門用語や略語が含まれる場合は、それらの用語集を提供することが、翻訳の品質を担保する鍵となります。

自社のブランドイメージにあった訳文を希望する場合は、「トーン・アンド・マナー」(トンマナ)のガイドラインである「スタイルガイド」や自社のイメージを伝える模範的な文章例を参考資料として共有する必要があります。

この翻訳の品質を決める重要要素である「用語集・参考資料・スタイルガイド」の有無について担当者からしっかりとした確認があるかどうか確かめましょう。

6.短納期・大ボリュームの案件に対応可能かどうか

基本的に翻訳の品質は「納期(=スピード)」と反比例の関係にあります。翻訳にかける時間が多ければ多いほど、リサーチや訳文の見直しにかける時間を確保できるので、品質が良くなります。反対に、翻訳にかける時間が短いほど、粗い翻訳に仕上がる可能性が高くなります。一定の品質を担保して納品するのが翻訳業者の責任ですので、「この大量の文書を明日までに納品してほしい」というような依頼は断る業者も少なくありません。

しかし「いかに短納期・大ボリュームの案件に品質を担保した翻訳を納品できるか」で翻訳業者の真価が問われます。

例えばグローバルに翻訳者のネットワークを確保している翻訳業者であれば、時差を利用して日本が夜の時間にヨーロッパ在住の翻訳者が作業を進め、翌朝に日本在住の翻訳者が作業を引継ぎ、翻訳を完成させることができます。

これは数ある方法のうちの一つに過ぎません。優秀な翻訳業者であれば、様々な工夫をこらして、希望納期と品質のバランスを保った最適なプランを提案することができます。「短納期・大ボリュームの案件」に対応可能かどうか、どのようなソリューションを提案できるのか、問い合わせてみましょう。

7.ネイティブチェックがあるかどうか

日本の翻訳業者の場合、「日本語→外国語」の翻訳については、そのターゲット言語に堪能な日本人翻訳者が対応することが多いです。そのため、「日本語→外国語」の翻訳の場合、「ネイティブチェック」が翻訳工程に含まれているのか問い合わせましょう。

例えば「日本語→英語」の日英翻訳ですが、英語が堪能な日本人翻訳者であっても、英語圏で生まれ育って初めて身に付く「ネイティブスピーカーの言語感覚」は持ち合わせていません。文章の意味は同じでも、「英語ネイティブはそのような言い回しはしない」ということは多々あります。また、言葉は日々変化していくものなので、最新の言語文化にも精通している必要があります。

「日本語→外国語」の翻訳で、文章の品質や自然さ、伝わりやすさを重要視する場合は、必ず「ネイティブチェック」が翻訳工程に含まれているのか問い合わせましょう。翻訳業者によっては、通常料金にネイティブチェックが含まれていたり、ネイティブチェックには追加料金が発生したりする場合があります。

8.レイアウト調整をしてくれるかどうか

WordやPower Point、ExcelなどのMicrosoft Officeファイルで翻訳を依頼する場合、基本的には原文ファイルに訳文を上書きした状態での納品となります。しかし、翻訳の際に文章の長さが変わるため、原文で整えていたレイアウト(テキストボックスや図表など)が崩れる場合があります。そこで原文と同じ見た目に整えるために、文字サイズや図表の位置を調整する必要があり、この作業を「レイアウト調整」と言います。翻訳後に、この「レイアウト調整」が実施されるかを、翻訳業者に確認しましょう。

翻訳業者によっては、「翻訳支援ツール」というソフトウエアを使って資料のデータを取り込んで翻訳を行っており、翻訳が完了した後、ソフトから出力したデータをそのまま納品するというパターンもあります。この場合、文字情報が入れ替わっただけでレイアウトは一切調整されておらず、依頼者側でレイアウト調整を行う手間が発生するので、注意が必要です。

複雑なレイアウト調整に関しては翻訳料金とは別に追加費用が発生する場合もあるので、併せて確認しましょう。

9.誤訳・訳抜け・修正希望についてのアフターケアがあるかどうか

良い翻訳業者であれば品質に万全を期しており、誤訳・訳抜けのようなミスを未然に防ぐ体制を整えていますが、100%絶対にミスがないとは限りません。万一ミスを見つけた場合、「無料で」修正に対応可能かどうか確認しましょう。誤訳・訳抜けに関しては翻訳業者に全責任がありますので、無料での修正対応が通例です。

また、4.5.で述べたような背景情報や参考資料を共有していたにも関わらず、訳文のスタイルが希望に合っていない可能性もあります。そういった場合も無料で修正が可能かどうか確かめましょう。翻訳業者によっては「2回までの修正であれば無料で対応可能」といったように、回数制限がある場合もあります。

10.翻訳の後工程(DTP・字幕焼き付けなど)に対応可能かどうか

パンフレットなどの配布物が翻訳対象であれば、翻訳後にデザインソフトによるDTP作業が必要となり、動画であれば字幕やテロップの焼付作業が必要となります。翻訳業者によっては、翻訳のみを受託しており、後工程作業のために別の業者を探す必要があります。

翻訳後の後工程が発生する場合、その翻訳業者がワンストップで後工程の作業に対応できるかどうか確認しましょう。

11.国際規格ISO27001(情報セキュリティ)とISO17100(翻訳品質保証)を取得しているか

企業として翻訳を外注する場合、重要な機密情報が翻訳対象資料に含まれているケースもあるかと思います。翻訳業者を信頼して、重要なデータのやり取りを行うには、事前に国際規格ISO27001(情報セキュリティ)を取得しているか確認しておくとよいでしょう。ISO27001を取得している場合、その翻訳業者は組織的に情報の取り扱いに細心の注意を払っており、情報漏洩を防ぐための適切な情報セキュリティマネジメントが徹底されていることが分かります。

また、翻訳品質を保証するための要求事項を定めた国際規格であるISO17100を取得していることは、良い翻訳業者の証明とも言えます。ISO17100では、【翻訳(及びセルフチェック)】【バイリンガルチェック】【最終検品】の3つが必須プロセスとして定められており、この翻訳の品質を担保するための3つの必須工程は、ISO17100によって認定された翻訳業者であれば確実に実施されていることが保証されます。

この2つの国際規格を取得しているかどうか問い合わせましょう。

まとめ

以上、しっかりした翻訳業者を見抜くために聞くべき質問11選 (9の質問と2つの観点)についての解説となります。

ぜひ上記に挙げた11のポイントを参考にして、信頼性の高い翻訳業者を探してみてください。

20年に及ぶ翻訳サービスの豊富な経験を持つテンナイン・コミュニケーションへのお問い合わせはこちら

 

 

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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