第5回「定款」
今回は定款に注目したいと思います。
会社の場合、定款は英語で主にArticles of Incorporationと呼ばれていますが、Articles of Organization、 Certificate of Incorporation、Corporate Charterとも言えます。また組織によってはArticles of Associationと呼ばれています。
簡単に説明すると、定款にはその法人の目的、組織、構成員、業務執行等などが書かれていますので、法人の基本規則になります。
日本では、社団法人(会社、公益法人など)を設立の際には定款を法務局に提出しなければならない文書の一つです。
定款は法人の発起人などに作成され、署名又は記名捺印されますが、発起人でなくても、法人設立の依頼を受けている会計事務所・弁護士事務所・行政書士事務所などに実際の作成の準備を依頼することが可能です。ですので、大抵の定款のフォーマットが似ています。
ご存知のとおり、法人の日常業務は株主総会で株主に選ばれた取締役が株主のために行います。定款にはこのようなことや、株式の種類から取締役の選び方や事業年度まで、いろんなことが書かれていますので、会社にとって重要な文書です。
そのため、法律上には定款に関するたくさんの決まりがあります。
■会社法では第26条から第31条と第575から第576条までに定款に関する規定があります。
以下は会社法からの引用:
第二編 株式会社
(定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報 処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
(定款の記載又は記録事項)
第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
第二十九条 第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
(定款の認証)
第三十条 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
2 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。
(定款の備置き及び閲覧等)
第三十一条 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。
2 発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に 掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支 払わなければならない。
一 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
3 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員(親会社の株主その他の社員をいう。以下同じ。)がその権利を行使するため必要があるときは、当該 親会社社員は、裁判所の許可を得て、当該株式会社の定款について前項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をす るには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
4 定款が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における第二項第三号及び第四号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務 省令で定めるものをとっている株式会社についての第一項の規定の適用については、同項中「本店及び支店」とあるのは、「本店」とする。
第三編 持分会社
第一章 設立
(定款の記載又は記録事項)
第五百七十六条 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 社員の氏名又は名称及び住所
五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
第五百七十七条 前条に規定するもののほか、持分会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
■一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の第10条から第14条(一般社団法人)と第152条から第156(一般財団法人)にも定款に関する規定があります。
以下は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律からの引用:
第二章 一般社団法人
第一節 設立
第一款 定款の作成
(定款の記載又は記録事項)
第十一条 一般社団法人の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 名称
三 主たる事務所の所在地
四 設立時社員の氏名又は名称及び住所
五 社員の資格の得喪に関する規定
六 公告方法
七 事業年度
2 社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない。
第十二条 前条第一項各号に掲げる事項のほか、一般社団法人の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
第三章 一般財団法人
第一節 設立
第一款 定款の作成
(定款の記載又は記録事項)
第百五十三条 一般財団法人の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 名称
三 主たる事務所の所在地
四 設立者の氏名又は名称及び住所
五 設立に際して設立者(設立者が二人以上あるときは、各設立者)が拠出をする財産及びその価額
六 設立時評議員(一般財団法人の設立に際して評議員となる者をいう。以下同じ。)、設立時理事(一般財団法人の設立に際して理事となる者をいう。以下この 節及び第三百十九条第二項において同じ。)及び設立時監事(一般財団法人の設立に際して監事となる者をいう。以下この節、第二百五十四条第七号及び同項に おいて同じ。)の選任に関する事項
七 設立しようとする一般財団法人が会計監査人設置一般財団法人(会計監査人を置く一般財団法人又はこの法律の規定により会計監査人を置かなければならない 一般財団法人をいう。以下同じ。)であるときは、設立時会計監査人(一般財団法人の設立に際して会計監査人となる者をいう。以下この節及び第三百十九条第 二項第六号において同じ。)の選任に関する事項
八 評議員の選任及び解任の方法
九 公告方法
十 事業年度
2 前項第五号の財産の価額の合計額は、三百万円を下回ってはならない。
3 次に掲げる定款の定めは、その効力を有しない。
一 第一項第八号の方法として、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定め
二 設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め
第百五十四条 前条第一項各号に掲げる事項のほか、一般財団法人の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
つまり、法人の種類によって、定款に1記載しなければならない事項と2記載しなければ効力を持たない事項と3記載しなくてもよいが、記載されることによって強力な効果を持つようになる事項があります。
定款のスタイルは契約書に似ていますので、以前の契約書に関する記事も参考になると思います。インターネットでは定款の例文を英語でも日本語でもたくさん掲載されていますが、簡単にまとめると、定款によく記載されているのは:
商号(英語の表記も記載されている場合も多い)
Corporate Name
目的
Objectives
本店の所在地
Location of Head Office
機関
Organizations
取締役・監査役・会計監査人の設置
Establishment of Directors, Auditors and Accounting Auditors
公告方法
Method of Notification
発行可能株式総数
Total Number of Shares Issued
種類株式
Type of Shares
株券を発行
Issuing of Share Certificates
株主名簿管理人
Shareholder Register Administrator
株主総会
General Meeting of Shareholders
株主総会決議
Resolutions of General Meeting of Shareholders
招集
Convening
招集権者
Convener
決議の方法
Resolutions
議決権の代理行使
Proxy Voting
議事録
Minutes
取締役会・監査役会
Board of Directors and Board of Auditors
取締役、監査役の数
Number of Directors and Auditors
選任方法
Method of Appointment
取締役・監査役の任期
Term of Directors and Auditors
代表取締役その他株式会社を代表する者
Representative Director and Other Persons who Represent the Company
報酬
Compensation
招集権者
Convener
取締役会を招集
Convening of Meetings of the Board of Directors
取締役会の招集通知
Notification of Convening of Meetings of the Board of Directors
議長
Chairman
取締役会の定足数・決議要件
Quorum and Resolution Requirement for Meetings of the Board of Directors
取締役会の決議
Resolutions of Meetings of the Board of Directors
書面決議
Written Resolutions
取締役による免除
Director Exemption
事業年度
Business Year
剰余金の配当等
Distribution of Excess Funds
基準日
Base date
設立または結成年月日
Date of Establishment
発起人の氏名及び住所
Name and Address of Founder
設立に際して出資される財産
Assets Investment Upon Establishment
*会社また会社の規模によって内容に多少の違はあります。
【注意点】
定款のスタイルは契約書に似ていますので、特に注意点はありませんが、会社名の表記に注意が必要です。
まずは会社のウェブサイトをチェックし、英語の表記を確認します。
会社名がカタカナの場合は、ローマ字にするか英語にするかを決めなければなりません。
たとえば、定款に「当会社は、株式会社テンナイン・コミュニケーションと称して、英文ではTen nine Communications, Inc.と称する。」とあった場合、どう訳したらいいと思いますか。
「株式会社テンナイン・コミュニケーション」を英語にするとTen nine Communications, Inc.になります。
「The Company is called Ten nine Communications, Inc. and is called Ten nine Communications, Inc. in English」は不自然ですよね。
「The Company is called Kabushikikaisha Tennain Komyunikeshon and is called Ten nine Communications, Inc. in English」もなんだか変ですよね。
ですので、このような場合「The Company is called Kabushikikaisha Ten nine Communications and is called Ten nine Communications, Inc. in English」もしくは「The Company is called Ten nine Communications, Inc.」をお勧めしますが、依頼元に相談するのも一つの解決の方法です。