TRANSLATION

Vol.41 よく読み、よく見て、よく聞く

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

森尚子 Hisako Mori

東京都出身。東京在住。
経済・ビジネス・契約書の分野を中心に英日・日英のフリーランス翻訳。自由学園卒。
ビジネス英語を学んだ後、広告会社、出版社を経て、現在に至る。

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契約書の和訳ではいつもお世話になっている森さんに今回はご登場いただきました。遅い時間に依頼をしてもいつも穏やかにご対応していただける懐の深さに何度も助けていただいているのですが、今回も地震の影響がまだまだ残る状況で「桜を愛でながらお伺いしますね」とさらっとおっしゃっていただき、やっぱりいつもの穏やかな口調で色々なことをお話ししていただきました。

森さんが語学に興味をもったきっかけは何ですか?

― 特に自分で意識したことはないのですが、子供時代からとにかく本を読むのが大好きだったんです。中学1年生のときに父が何を思ったのか夏休みにいきなり丸善に連れて行ってくれて「この子が読める洋書をください」と店員さんに言って(笑)その時に「トムソーヤの冒険」を買ってくれたことがきっかけだったと思います。

なぜ、女の子にトムソーヤの冒険だったのかは謎ですが、父も「あ、これで大丈夫です」と何の根拠もないのにそう言ってその本を買ってくれたんですね。

その時は知っている単語を拾い、絵を見ながら読んだのですがそれが、色々なペーパーバッグを読み始め、語学に熱中する最初のきっかけでしょうか。

とにかく本が好きで、英語もなぜか自分にしっくりきましたね。でも、当初は単語がわからなければどんどん読み飛ばして・・・・の読書でしたが(笑)

翻訳を職業にしようと思った経緯を聞かせてください。

― 電通に入社して国際連絡局という部署に配属されまして、そこで色々な英語の文書を目にし、少しですが翻訳もしました。会社勤めをするよりは色々翻訳するほうが楽しくて、また自分にはそのほうが向いているな~と考え始めたのが社会に出てしばらくしてからでした。同じ場所で限られた分野を常に翻訳するよりは色々な分野の翻訳をすること、それは私にとっては新しい知識をどんどん身につけていくことだったのですが、それが楽しくて、楽しくて。

広告会社、出版社を経て、幸いにもオンサイト翻訳者として働いていたところで次々に新しい分野の翻訳をするチャンスに恵まれ、専門的なことは自分なりに調べながら翻訳をしていきました。学生時代に翻訳者を目指して特別に意識して英語を勉強したとかはなかったのですがオンサイト時代に現場でたくさん翻訳させてもらった経験が自分の今の基礎になっています。未経験の分野に尻込みしないことも大事です。またその時々の自分の英語力を客観的に知るために英検やTOEICを受けましたがその試験に向けて集中的に英語を勉強したことも本当に役に立っていますね。

フリーランスになりたいなと思い始めて4年ほどオンサイトと在宅のバランスをとりながら翻訳をしていく中で徐々に在宅へ移行していったのが20年ほど前になります。

オンサイト時代にスキルの高い社内翻訳者さんの翻訳や、普段からの英語への接し方などを見て、それを真似ると同時に自己流でやっていた英語の勉強方法に自信が持てるようになったことはオンサイト時代の大きな収穫ですね。

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弊社では「森さん=契約書の翻訳」なのですが今に至る経緯を教えていただけますか?

― 専門分野に特化しないで幅広く翻訳をするほうが自分には向いていますし、またそれが楽しくもあるのですがフリーランスになり始めたころによくお仕事をいただいているところから「契約書やってみる?」と言っていただき、専門書で調べたり、手引書のようなものを参考にしながら翻訳しました。専門辞書もあれこれ入手しましたね。契約書は形式がある程度決まっているのでとにかくそれをまず身につけるようにしました。ですので、契約書については意識してある程度の勉強をするにこしたことはないと思います。いただいたお仕事だけを通して身につけていけるものではないかもしれませんね。

翻訳の面白いところはどういったところですか?

― 新しいことを知るのが面白い!というところです。今でも「こんな単語があったのか???」という場面に遭遇しますし・・・。ちょっと手間取りますけど、初めて目にしたことでも時間をかけて調べ解決して翻訳できたときは本当に快感ですね。性格的に「まずは自分でできるところまでやってみたい!」「わからないことは自分で調べて解決したい!」と思うほうです(笑)。パソコンやテレビなどの接続も自分でやりたいんです。

電気屋さんに頼むのはもったいないですね(笑)

あとうれしく思うのは、エージェントの方から「クライアントさんから『またあの方にお願いしたい』と言われました」と聞いた時でしょうか。

一人でパソコンの前でニマニマしてしまいますね~(笑)

リフレッシュ方法などあれば教えてください。

― 翻訳ばかりしていたせいか腰痛気味なので(笑)泳ぎに行ったり、ヨガに行ったりして意識的に外出して体を動かすことです。あとは、映画を見ることですが、「映画はできるだけ家では見ない!」ことにしています(笑)。外出の理由を作るためでもあります。

最近見た「英国王のスピーチ」はお薦めですよ!言葉を扱う者として色々な意味で面白かったですね。映像翻訳はやらないのですが、字幕を見ながらセリフを聞き、こう訳すのか、違う訳だとどうなるだろう、この表現は使える!と、脳みそは少し仕事モードですがそうやって映画を見るのも楽しいんですよね(苦笑)

でも、気付くと3カ月ほどヨガもせず水泳もせず翻訳しかやっていなかったな~という期間があるので意識的にリフレッシュしないといけませんね。

今後の目標をお聞かせください。

― いつか自分で面白いなと感じる英語の原書の翻訳本の出版でしょうか。いつか実現するといいなと思っています。リラクゼーションの分野に興味があるので癒し、癒されながら(笑)ゆっくり翻訳してみたいですね。

翻訳を目指している方にアドバイスなどがあればお願いします。

― もし、オンサイトに行かれるのであれば最初は真似するだけでもいいと思いますので社内にいらっしゃる「翻訳の重鎮」(笑)の方、翻訳の部署がある会社には必ずそういう方が一人はいらっしゃいますので。そういう方の仕事の仕方や英語への接し方などを観察して素直に自分も実行してみることをお薦めします。そういう方々も常に勉強しているのに接し、私自身驚いたものです。オンサイトは仕事の場であると同時に学びの場でもあると思います。もうひとつは、「よく読み、よく見て、よく聞いて」をお勧めします。地味な作業ですがやはりそうすることでしか身につかないことがあるからです。

最後は、翻訳を目指している人同士の横のつながりを意識して持つこともお勧めします。やはり情報交換や情報共有することは大事ですからね。私からはこのくらいしかお伝えできませんがどうぞみなさんがんばってください!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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