TRANSLATION

Vol.14 様々な分野を経験すること

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

[プロフィール]
黒田幸世さん
Yukiyo Kuroda
高校時に1年間米国留学。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒業後、CS/ケーブルテレビ放送局に翻訳要員兼コーディネーターとして入社。平成10年より、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は映像翻訳、出版翻訳、産業翻訳と様々な分野にて活躍中。

Q. 英語に興味を持ったきっかけは?

子供の頃、親に連れられて英会話教室に通っていたらしいのですが、あまり覚えていないんです。中学生の頃流行ったアメリカのポップミュージックや映画がきっかけで、英語に興味を持つようになりました。成績も、科目の中では英語が一番良かったですね。高校生の時には、1年間アメリカに留学しました。テレビで見るアメリカの家族やハイスクールライフに対する興味が強かったので、一度どういうところか見てみたいという気持ちがあったんですよ。当時の英語力は、中学3年間で勉強したテキストレベルなので、会話もままならず、事前に勉強していったヒアリングもあまり役には立ちませんでしたが、この経験は私にとって非常に貴重な財産です。

Q. いつ頃から、語学を職業にしようと思われたのですか?

日本に戻ってから英語の勉強に熱が入るようになり、大学も英米語学科を選択しました。漠然と、何か英語を生かせるような仕事に就きたいと思っていましたが、それが何なのかは自分でもまだわかりませんでした。ふらりと立ち寄った就職科の張り紙を見て、目についた案件に応募したんです。翻訳要員募集って、何となく面白そうだなと思って。

Q. ケーブルテレビ放送局でのお仕事内容は?

フリーランス翻訳者のコーディネーションと翻訳業務を兼務しました。何しろ未経験で映像翻訳のルールもわからず、最初は失敗ばかりでした。今はDVDの特典映像や、衛星放送番組など映像翻訳の需要も多いので、以前に比べると新しい人も入りやすい状況になりましたが、当時は経験豊富な方ばかりで狭き門でした。原稿も全て手書きでやっていたんですよ!

Q. フリーランスになったきっかけは?

会社ではコーディネーターとしての作業もあったので、なかなか翻訳だけに集中できませんでした。土日など人がいない時に出勤して原稿を書いたこともありましたが、これなら家で集中してやったほうがいいなと思ったんです。インターネットが普及し始めた頃で、私も自宅のパソコン環境を整え、思い切ってフリーランスになることにしました。若かったので、不安や心配はありませんでした。何も考えていなかったのかもしれませんが(笑)。
実際フリーになって、大変なこともありましたが、待っているだけでなく、自分で仕事を探しにいかないといけないことがわかったからこそ、その分がんばれたのかなと思います。

Q. 出版、映像、産業翻訳と、様々な分野をご経験されていらっしゃいますね。

せっかくフリーになったので、分野問わずお仕事のお話があれば請けるようにしました。マーケットが広がって、映像翻訳の単価が全体的に下がったこと、最近は体力的に少しつらいこともあって、無理して大量に請けることはなくなりましたが。翌日の放送に間に合わせるために、夜中にテレビ局に行くこともあるので、次の日は使い物にならなくなってしまうんですよ(笑)。
出版翻訳を始めたのは、元出版社にいらしたコーディネーターの方との出会いがきっかけでした。リーディングをさせて頂き、何冊か出版に至った本もあります。生活を支えているという意味では、産業翻訳の仕事です。ご依頼頂く件数も一番多いと思います。
それぞれに魅力とやりがいがあります。多くの方がご自分の専門を持っていらっしゃるので、私のようにあれもこれもという人は少ないかもしれませんが、いろんな分野を経験するのは決してマイナスにはならないと思います。それぞれ本当にたくさん学ぶところがありますから。

Q. スキルアップのために心がけていることは?

PC環境の充実です。海外から依頼を請ける時、必ずといっていい程聞かれるのが、ソフトウェア環境の充実度です。TRADOSやPAGEMAKERは当然のように要求されますが、PCの設定は最新にしておくことが重要だと思っています。
それから日本語力。翻訳は日本語が全てです。もともと文章力がある方ではないので、もっともっと勉強しなければと思っています。

Q. 今後のキャリアプランは?

翻訳を続けます。今のスタイルが自分に一番合っている気がしますし。フリーになった時、ちょうどSOHOが話題になり始めた頃だったんですよ。会社通勤が苦手で、体力にも自信のない私にはぴったりでした。世界中どこにいてもパソコン1つで仕事ができます! 理想としては、海の近くに住んで仕事も生活ももっと充実させたいなと思っています。

Q. これから翻訳者を目指す方へのメッセージをお願いします。

いろんなジャンルを経験してはどうでしょうか。得意だと思っていたものが、実はそうでなかったり、その逆もあると思うんです。実力世界なので、少しでもいろんな仕事を経験していると、プラスになります。最初は選り好みせず、来たものはどんどんチャレンジしてください!

翻訳本

<編集後記>
映像、出版、産業翻訳と、様々な分野を手がけていらっしゃる黒田さん。これから翻訳者を目指す人へのメッセージは必見ですね!

Written by

記事を書いた人

ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

END