TRANSLATION

Vol1. 鈴木英介さん 「翻訳力」だけでは勝負できない時代

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

【プロフィール】

鈴木英介さん
Eisuke Suzuki 中央大学経済学部経済学科卒業。大手予備校勤務後、フランス語学留学。帰国後、輸入会社や出版社に勤務しながらフリーランスとして英・仏翻訳に従事。会社と翻訳を兼業していたが、9年前におもいきって翻訳を専業とし、現在に至る。

Q. どうして翻訳者に?

とにかく自宅で出来る仕事がしたかったんです。語学は全く専門外でしたが、大学時代第二外国語で取った仏語が面白くて、約5年会社勤めをした後フランスに1 年間語学留学しました。帰国後何とかその経験を生かしたいと思い、翻訳の仕事を探したんですが、仏語の仕事はほとんどなくて。じゃあ英語もやってみようかと。企業で働きながら副業で翻訳をやっていましたが、やはり頼む方としても急ぎのものは頼みづらいだろうし、24時間受け入れ体制にしないと来る仕事も来ないと思い、フリーランスになりました。
もともと読書家でもないのですが、変な文章はものすごく気になるんです。好奇心も強く、分からないことがあると気になって寝られないような性分なんですよ(笑)。もしかしたらそういう性格が向いていたのかもしれませんね。

Q. フリーになってからは順調な道のりでしたか?

いえ、最初は配送のアルバイトなどもしていたんですよ。3ヶ月経ったぐらいから翻訳トライアルに合格するようになり、それからは大体切れ目なく仕事が来るようになりましたね。学校を持っている会社の中には、仕事を与えながらビギナー翻訳者を鍛えてくれるところもあるんです。今考えると恥ずかしくなるような仕事もたくさんしていると思いますが、それでも辛抱強くつきあってくれて、フィードバックももらえたので本当に感謝しています。まさに、仕事をしながら技術も身に付けさせてもらったという感じですね。僕は一度も学校に行ったことがありませんが、そういう方法もあると思うんですよ。今は競争が激しいから、なかなか難しいのかもしれませんが。

Q. 実力アップの秘訣は何ですか?

僕の場合、仕事自体が勉強なんです。毎日仕事がなくなるかも、という恐怖心で徹夜をしながらやって来たので、改めて勉強という意味では何もしていません。時間が空くと新しいソフトを調べてみたり、パソコンのグレードアップに気を取られてしまって、脳ミソのグレードアップが遅れていますね(笑)。ただ、翻訳には語学力のみならず、それ以上に日本語力や調査力、パソコンスキルが非常に重要です。今は仕事の流れが非常に早く、インターネット納品時代。資料が全くない場合はネットを駆使して調べます。翻訳力はなかなか目に見える形で伸びませんが、調査力は割とすぐ形になって出てくると思います。その辺のバランスも、翻訳者に問われる能力の一つですね。

Q.英日・日英の割合はどうですか?

圧倒的に英日が多いですね。日英もたまに頂きますが、英日に比べて時間がかかるので。ただ、日英をやっていると英日の勉強になるし、英日の場合も同じことが言えます。英日の場合1日400字で10枚、これがかなり安心して納品出来るペースですね。実際はそれ以上やらないと追い付かない仕事が多いのですが……。

Q. 企業内翻訳の道は考えませんでしたか?

今となってはそういう道もあるなぁと思いますが、とにかく自宅で仕事がしたかったので。当時はSOHOなんて言葉もありませんでしたが、「自営業」という響きに憧れていました。しかし実際はスケジュール管理が大変で、サラリーマンの頃のように土日休みや休日を心から楽しめなくなったというか、仕事と休みの切り替えがまだうまくいってないんですねぇ(笑)。

Q. これからの夢について教えて下さい。

ものを扱う仕事に憧れますね。今は1日10時間以上もパソコンの前で形のないものを生み出しているので、「何でも修理屋さん」なんかになりたいですね。年金をもらえるようになったら、壊れたものを修理して人に喜んでもらえたら幸せだなあと思うんです。それも、自宅で出来ればいいですね。やっぱり家が大好きですから(笑)。

<編集後記>
いつも質の高い翻訳で定評のある鈴木さんですが、その控えめなご様子には頭が下がります。通訳者になりたいと思ったことは? の質問に、「ありません! 憧れますが、通訳者さんは異星人のように見えます(笑)。外国人を見るとあがってしまって……。イギリス人の友人とも日本語で会話してもらってます」とのお答えも、いかにも鈴木さんという感じでした。

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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