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カンタン法律文書講座 第六回 契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (4)

江口佳実

カンタン法律文書講座

英米法によるカンタン法律文書講座
第六回契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (4)

いよいよ、一般条項の最後になります。

そろそろ飽きてきたなぁという皆さんも、もう少しお付き合い下さいね。

今回は、「完全合意」「仲裁」「準拠法」「見出し」「副本」の条項についてです。

※(1)~(4)の数字の部分をクリックしてください。説明が出ます。

Article 11.Entire Agreement (1)

This Agreement shall constitute entire agreement and understanding between the parties with respect to rights and obligations hereunder and all prior agreements, promises, arrangements, representations and understandings relating to the subject matter of this Agreement, whether express or implied, oral or written, shall be superseded by this Agreement.

 

(1) 第11条  完全合意

本契約は、本契約に基づく権利および義務に関する両当事者間の完全なる合意および了解事項を構成するものとし、本契約の主題に関連する事前の合意、約束、協定、表示、および了解事項はすべて、明示的であるか黙示的であるか、口頭であるか書面によるかにかかわらず、本契約が優先する。

 

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Article 12.Arbitration (2)

Any dispute arising between the parties out of or in relation to this Agreement, or breach thereof, which cannot be settled through discussion and negotiation by the parties, shall be finally settled by arbitration upon the written request of either party. The arbitration proceeding shall be conducted in English, in London or at such other place as may be agreed by the parties, by a panel of 3 arbitrators in accordance with the Rules of Arbitration of International Chamber of Commerce. The arbitration award shall be in writing, and shall be final and binding upon the parties. The satisfied party may move the court of competent jurisdiction to enter judgment on the arbitration award.

 

(2) 第12条 仲裁

本契約またはその違反から、またはこれに関連して、両当事者間で生じる紛争で、両当事者による協議および交渉によって解決できないものはすべて、一方当事者の書面による要求に応じて、仲裁によって最終的に解決されるものとする。仲裁手続きは、英語で、ロンドンまたは両当事者が合意するその他の場所で、国際商業会議所の仲裁規則に従い3人の仲裁人から成る仲裁委員会によって解決されるものとする。仲裁の判断は、書面によって行われ、最終的かつ両当事者に対する拘束力を有するものとする。仲裁判断に満足した当事者は、管轄権を有する裁判所に、かかる仲裁判断を判決として登録するよう求めることができる。

 

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Article 15. Governing Law, Jurisdiction (3)

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of England without regard to principles of conflict of laws and the parties hereto submit to the exclusive jurisdiction of High Court of Justice in London with respect to all controversies arising from the interpretation and performance of this Agreement.

 

(3) 第15条 準拠法、管轄権

本契約は、抵触法の原則に拘らず、イングランド法に準拠し、これに従い解釈されるものとし、本契約の両当事者は、本契約の解釈および履行から発生する全ての紛争について、ロンドンの高等法院の専属的裁判管轄に服する。

 

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Article 19.Headings (4)

The headings used in connection with the paragraphs and subparagraphs of this Agreement are inserted only for purposes of reference. Such heading shall not be deemed to govern, limit, modify or in any other manner affect the scope, meaning or intent of the provisions of this Agreement.

 

(4) 第19条 見出し

本契約の条項に関する見出しは全て、参照の目的においてのみ挿入されている。かかる見出しは、本契約の条項の範囲、意味、または意図を左右する、制限する、修正する、または何らかの形で影響を与えるとみなされてはならないものとすう。

 

 

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Article 20.Counterparts (5)

This Agreement may be executed in one or more counterparts, each of which shall be deemed an original, but all of which together shall constitute one and the same instrument.

 

(5) 第20条 副本

本契約は、複数の副本で締結することができ、そのそれぞれは、原本とみなされるものとするが、かかる副本の全てが、単一かつ同一の文書を構成するものとする。

さあ、これで一般条項の説明はざっと終わりました。

最後に IN WITNESS WHEREOFの条文を入れて、契約書はできあがっていきます。

実際には、一般条項の内容はそれぞれで、一般条項以外の条文はさらに様々なものになりますが、例文に挙げたのは基本的かつもっともよく見られそうな文言を集めたものです。例文を何度も読み返し、訳文例と比較したり、【解説】を読んでまた条文を読んだりしましょう。また実際に、お手元に英文の契約書があれば、それと比較してみると勉強になると思います。手元に契約書がなければ、インターネット上で検索してみると、たとえばマイクロソフト社や Adobe 社のライセンス契約書などが出てくると思います。

契約書翻訳に慣れてくると、一般条項の部分の訳文作成は、ほとんど考えずに立ち止まることなくパタパタとキーボードを叩いて高速で訳すことができるようになります。

次回は、様々な契約書のタイプを紹介します。

お楽しみに!

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記事を書いた人

江口佳実

神戸大学文学部卒業後、株式会社高島屋勤務。2年の米国勤務を経験。1994年渡英、現地出版社とライター契約、取材・記事執筆・翻訳に携わる。1997 年帰国、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は翻訳者として活動する傍ら、出版翻訳オーディション選定業務、翻訳チェックも手がける。

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