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カンタン法律文書講座 第四回 契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (2)

江口佳実

カンタン法律文書講座

英米法によるカンタン法律文書講座
第四回契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (2)

第4回目の今回も、様々な種類の契約書の中でよく見られる、共通の条項(申し遅れましたが、このような条項を「一般条項」といいます)とその役割や特徴の続きをお話します。

前回は、「定義」「期間と解除」「支払い」「存続」という条項をご紹介しました。
今回は「守秘義務」「通知」「免責」「権利放棄」について、見ていきましょう。

では、具体的に見ていきましょう。
それぞれの例文の番号をクリックしてください。ポップアップで解説が表示されます。

※(1)~(4)の数字の部分をクリックしてください。説明が出ます。

(1) 
Article 11. Confidentiality
During the term of this Agreement and for 5 years thereafter, either of the parties shall keep strictly confidential all of the information it (“Receiving Party”) may obtain from the other party (“Disclosing Party”) in connection with this Agreement and shall not disclose such information to any third parties except when such information:
a)is known to the Receiving Party at the time of the disclosure, as evidenced by its written records;
b) is generally known to the public at the time of disclosure or later becomes so without any fault on the part of Receiving Party;
c) is disclosed to the Receiving Party by a third party having a right to make such disclosure;
d) is independently developed by Receiving Party without using the information disclosed by Disclosing Party.
e) is required to be disclosed by law or a court order.

訳:
第11条 守秘義務
本契約の期間中およびその後5年間、いずれの当事者も、本契約に関連して自己(「受領側当事者」)が他方当事者(「開示側当事者」)から入手した全ての情報の秘密を厳密に保持するものとし、いかなる第三者にもかかる情報を開示してはならないものとする。ただし、かかる情報が以下のとおりである場合はその限りでない。
a) 開示の時点において受領側当事者に知られているものであり、これが受領側当事者の書面によって立証される場合。
b) 開示の時点において公知のものである、または後に受領側当事者の過失なくして公知のものとなる場合。
c) 開示の権利を有する第三者によって、受領側当事者に開示される場合。
d) 開示側当事者が開示した情報を使用することなく、受領側当事者によって独自に開発された情報である場合。
e) 法律または裁判所の命令によって開示が要求される場合。

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(2) 
Article 13. Notices
Any notice that may or is required to be given hereunder shall be in writing and shall be given by facsimile transmission (confirmed by mail), personal delivery (including by a reputable courier), or mailing (by first class receipted prepaid mail) to the address for each Party specified below or such other address as such Party may have notified the other pursuant to this Article. In the case of facsimile transmission or personal delivery, such notice shall be deemed to have been given upon the date of such transmission or delivery. In the case of mailing, such notice shall be deemed to have been given seven (7) days after such mailing.

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第13条 通知
本契約に基づき、付与してもよい、または付与することが求められる通知は全て、書面でなされるものとし、かつ、ファクシミリ(郵便で確認する)、人による配達(評判の高い宅配便を含む)、または郵送(ファーストクラスの配達証明付き郵送料前払い郵便による)によって、以下に記載する各当事者の住所に宛てて、または、かかる当事者が本条に基づき他方当事者に通知したその他の住所に宛てて、送付されるものとする。ファクシミリ送信または人による配達の場合、かかる通知は、かかる送信または配達の日になされたとみなされるものとする。郵送の場合、かかる通知は、投函から7日後になされたとみなされるものとする。

(住所の記載はそのまま原文でかまいません)

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(3)
Article 15. Indemnity
The Purchaser agrees to indemnify and hold the Seller harmless and against all claim dispute, cost, expenses, damages or loss of whatsoever nature including without limitation, consequential、incidental, indirect, or punitive damages or loss, arising out of or in connection with the performance of this Agreement.


第15条 免責
買主は、本契約の履行から、またはこれに関して生じる、結果的、付随的、間接的、または懲罰的損害賠償または損失などを含めこれらに限定されず、その性質の如何にかかわらず、すべての申立、紛争、費用、支出、損害賠償、または損失について、売主を免責し、これに害を与えないことに同意する。

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(4) 
Article 19. Waiver
No failure or delay on the part of the Company to exercise any right or remedy hereunder shall be deemed to operate as a waiver thereof, nor shall any single or partial exercise of any right or remedy by the Company preclude any other or further exercise thereof or the exercise of any other right or remedy.


第19条 権利放棄
会社が、本契約に基づくその権利または救済の履行を怠った、あるいはこれに遅延したとしても、かかる権利または救済の放棄とみなされてはならないものとし、会社が、その権利または救済を単一または部分的に行使したとしても、その他の場合またはその後の行使、またはその他の権利または救済の行使を妨げないものとする。

今回とりあげた条項の中には、守秘義務、免責、権利放棄といった、契約書に特有の概念が含まれていました。また免責条項にはさらに、付随的賠償などの概念もありましたね。一見、難しいと感じるかもしれませんが、これらの条項や概念は、多くの契約書で登場するものであり、慣れてしまえばどうってことはありません。【解説】の部分で示した例に照らし合わせて、どういう効果のある条項であるのかを理解してください。また、indemnify and hold harmless など、特有の言い回しを覚えてしまうことも大切です。

次回も引き続き、「一般条項」をご紹介していきます。
お楽しみに!

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記事を書いた人

江口佳実

神戸大学文学部卒業後、株式会社高島屋勤務。2年の米国勤務を経験。1994年渡英、現地出版社とライター契約、取材・記事執筆・翻訳に携わる。1997 年帰国、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は翻訳者として活動する傍ら、出版翻訳オーディション選定業務、翻訳チェックも手がける。

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