第81回 ディスクレーマー④
こんにちは。今月も投資家向け文書には必ず載っているDisclaimerを取り上げます。ま、あまり楽しいものではないのですが(笑)、本筋の金融翻訳とは異なり、内容的に複雑な部分があるわけではないので、コツさえつかめばさらさらと…行かないんですよね、これが。必ずどこか、悩み所があります。
さてきょうは、具体的なリスクの説明部分。ポートフォリオを運用する際に、どういったリスクがあるかを説明している箇所を訳してみましょう。
【本日の課題】
Portfolio Management Risk: If the strategies used and investments selected by the Fund’s portfolio management team fail to produce the intended result, the Fund may suffer losses or underperform other funds with the same investment objective or strategies, even in a favorable market.
●Portfolio Management
managementは普通「管理」や「経営」ですが、資産運用の世界では「運用」と訳すことが圧倒的に多いので、注意です。ただ、本当に「資産に投資し、増やしていくこと(=運用)」を意味しているときもあれば、単に他のポートフォリオとも合わせてメンテナンスを行うなど事務処理的な意味で使われていることもあります(portfolio management systemとなっていれば、「ポートフォリオ管理システム」の可能性が高いでしょうか)。しかしここは、本文の内容からみても「ポートフォリオ運用」でしょう。
●investments
これも通常は「投資」という行為そのものを指しますが、selected by the Fund’s … teamの説明から考えても、「投資商品」を指していると思われます。
●a favorable market
「有利な市場」「好調な地合い」「強気相場/市場/局面」など、文脈によっていろいろな訳が考えられます。
今回も個別に見るべき箇所はこのくらいです。ですます調で、丁寧に訳出してみましょう。the Fundは「当ファンド」で。
【本日の課題】(再掲)
Portfolio Management Risk: If the strategies used and investments selected by the Fund’s portfolio management team fail to produce the intended result, the Fund may suffer losses or underperform other funds with the same investment objective or strategies, even in a favorable market.
【試訳】
ポートフォリオ運用に係るリスク:当ファンドのポートフォリオ運用チームが用いた戦略および選定した投資商品が意図した成果を達成できない場合、強気相場の下でもリターンがマイナスとなる、または運用目標や戦略が同じ別のファンドをアンダーパフォームすることがあります。
※特に後半は、suffer lossesを「損失を被る」にしたり、underperform other fundsを「別のファンドのリターンを下回る」にしたり、訳し方はいろいろ考えられます。前回言いました通り、クライアントが普段どのような表現を使っているのか、参考資料などを見て必ず確認し、それに揃える必要があります。