第64回 債券見通し⑥
こんにちは。いいかげん、わたしも少し飽きてきましたが(笑)、今月も新興国債券市場に関する見通しの文章を続けます。今回で最後です。前回は個別の説明に終わりましたので、きょうはさっそく訳出に入っていきましょう。
【本日の課題】
EM corporates entered the crisis last year on a strong footing. And in fact, default rates in emerging markets last year were lower than those of U.S. high yield. And as earnings continue to recover, we expect that bondholder-friendly behavior to continue with capex and M&A remaining limited.
●entered the crisis last year on a strong footing
先月ご説明した通り、strong footingは「しっかりした事業基盤/業績」というニュアンスです。これは2021年5月の記事で、crisisはコロナ危機のことと思われますので、そのあたりを補足しても良いでしょう。
●with capex and M&A remaining limited
このcapex(capital expenditure=設備投資)とM&Aは、債券保有者でなく株主の方を利する行動とされています。この文は、それらが抑制されている一方で、社債権者寄りの行動は今後も続くでしょう、と説明しています。
例えば設備投資は、企業が成長を目指して行うものですが、当然ながら手元の資金は投資に伴って減っていきます。手元資金が減れば、単純に言って社債の償還に回す資金が減るわけで、債権者さんは不安になります。逆に、設備投資をすれば企業の成長、ひいては株価上昇につながるかもしれず、株主にとっては喜ばしい話です。以上をbondholder-friendly、shareholder-friendlyと表現するわけです。
上記は非常に乱暴な説明ですので、詳しく知りたい方は企業財務をぜひ勉強してみてくださいね。背景知識があるかないかで、このたった1行足らずの文章を自信を持って訳せるかどうかが決まります。
●continue to recover/behavior to continue/remaining limited
どれも「続く」で、いやになりますね(笑)。しかしきっちりそのニュアンスを入れた訳としましょう。
では訳出してみましょう。
【本日の課題】(再掲)
EM corporates entered the crisis last year on a strong footing. And in fact, default rates in emerging markets last year were lower than those of U.S. high yield. And as earnings continue to recover, we expect that bondholder-friendly behavior to continue with capex and M&A remaining limited.
【試訳】
新興国企業は、盤石な財務基盤を堅持したまま今回のコロナ危機に突入しました。実際、昨年のデフォルト(債務不履行)率は、米国のハイ・イールド企業を下回っています。業績はなお回復を続けており、今後は設備投資やM&A(合併・買収)活動については抑制する一方、社債権者寄りの財務行動を続けるものと予想されます。
※default rates in emerging marketsの「新興国」の部分を訳出していませんが、しつこくなりますので、あえて落としました。なくても意味は通じるとの判断です。