第61回 債券見通し④
こんにちは。今回も引き続き、新興国の債券市場に関する見通しの文章(ビデオで「ポートフォリオ・マネジャー」が話した言葉の書き起こし)を見て行きましょう。前回は解説のみで終わってしまいましたので、今回はいよいよ訳出です。余裕のある方は、前回の記事を振り返ってから訳出に取り掛かってください。
なお今回の課題には「債券」の文字は出てきませんが、「新興国市場債券」についての話ですので、それを念頭に読んでください。
【本日の課題】
Valuations look quite compelling with the investment grade portion of the emerging markets universe providing 50 to 70 basis points of yield pickup versus the developed markets; in emerging markets high yield, giving well over 150 basis points of yield pickup versus U.S. high yield.
訳出に入る前に、宿題を終わらせておきましょう。basis pointです。
basis pointは、実は第34回で説明したpercentage pointとよく似ています。一部を再掲します。
例えば肉まんが8個、あんまんが2個あったとします。割合は肉まん80%、あんまん20%です。ところがおなかのすいたわたしが肉まんを2個食べてしまい、ばれるといけないのですぐコンビニに向かったが、あんまんしかなく、仕方なくあんまんを2個買ってきたとします。これで肉まんが6個、あんまんが4個ですので、割合はそれぞれ60%と40%です。
ここで「肉まんは20%減った」「あんまんは20%増えた」とするのは、厳密には間違い。肉まんは8個から6個に減ったので、6÷8=0.75つまり25%の減少、あんまんは2個から4個に増えたので、100%の増加だからです。この違いを明確にするため、パーセントの数字が20増えたことを言いたい時は、「%」ではなく「パーセントポイント」を使います。
肉まんから話を戻しますと(笑)、basis pointはこのパーセントポイントを100分の1にしたもの、と考えてもらって大丈夫です。つまり1ベーシスポイントは0.01%分を意味します。
例えば金利が2%から2.75%になったとすると、上昇幅は75ベーシスポイントです。小数点以下が細かすぎるため、こういう表現にしているのでしょう。
さて、それでは今度こそ訳出してみましょう。
【本日の課題】
Valuations look quite compelling with the investment grade portion of the emerging markets universe providing 50 to 70 basis points of yield pickup versus the developed markets; in emerging markets high yield, giving well over 150 basis points of yield pickup versus U.S. high yield.
【試訳】
新興国市場の債券は、バリュエーションが極めて魅力的な水準で推移しています。このうち投資適格債は、先進国の投資適格債に対する利回りピックアップが50~70ベーシスポイント(bp)に達し、またハイ・イールド債も、米国ハイ・イールド債に対して150bpをゆうに超えるスプレッドを提供しています。
※universeを訳すか悩みましたが、今回の場合、特定のファンドが特に決めている投資対象、というイメージはなく、単に「他の市場の債券もあるなかで、新興国市場の債券」程度のニュアンスかと思いましたので、訳出していません。前者であれば、はっきり「投資ユニバース」とします。