第44回 図表を訳す④
こんにちは。2019年は「図表を訳す」シリーズを年内に終わらせるという自分なりの目標が達成できなかったうえに、新年1回目もこんな時期になってしまいました。今年はなるべく前倒しで進めて行きたいと思います! 今回は、これまでに取り上げられなかった表現をまとめて見てみましょう。
●% of GDP
図表に出てくる場合は、GDPと比較してどれくらいの大きさかを指すことがほとんどで、ずばり「対GDP比」という訳で問題ありません。(% of xxxという表現を訳すときに気をつけるべき点があるのですが、長くなりそうなので、来月お話することにします)
文章内で出てくる場合は、例えばこんな感じです。
The fiscal deficit will improve to 1.65% of gross domestic product (GDP).
財政赤字額は対GDP比1.65%に改善する見込みだ。
GDP総額が1兆円の国があったら、財政赤字は1兆×1.65%=165億円ということですね。
●% y-o-y
y-o-yはyear on yearの略で、違う年の同じ時期、例えば2019年1-3月期と2020年1-3月期、2019年2月と2020年2月を比べる場合などに使います。「前年同期比」「前年同月比」ということです。
Private consumption growth accelerated to 6.6% y-o-y from 2.1% growth in 2Q.
個人消費の伸びは、第2四半期の前年同期比+2.1%から同+6.6%に上昇した。
この例を見ても分かる通り、英語と日本語では数字の順序が逆になることがほとんどですので、「前年同期比」を入れる位置と数字の転記ミスに注意しましょう。
「同+6.6%」の「同」は、絶対入れよと言われるとき、絶対入れるなと言われるとき、いろいろです。クライアントの指示に従いましょう。+を入れるか入れないか、+(全角)にするか +(半角)にするかなども同様です。
y-o-yと似た表現として、q-o-q(quarter on quarter)やm-o-m(month on month)があります。q-o-qは、ある四半期を一つ前の四半期と比較する「前四半期比」。「前期比」と訳すこともあります。m-o-mは同様に「前月比」です。
●3mma
3 month moving averageの略で、意味は「3ヵ月移動平均」。
「移動平均」の意味については、わたしが稚拙な説明をするより、ネット上のしっかりした説明を読む方がはるかによいでしょう。ぜひ確認しておいてください。金融翻訳者を目指す人には必須の知識です。
●qoq sa
qoqは先ほど出てきたq-o-qと同じで「前年同期比」。saはseasonally adjustedで、「季節調整済み」です。
「季節調整」とは、月毎のbusiness day(営業日)数の違いや天候による影響、決算期やボーナス商戦による影響などを取り除いて、比較しやすくすることを言います。例えば米国では、クリスマス商戦で消費が大きく拡大し、しかも31日間ある12月と、これといったイベントがなく28日(29日)しかない2月のGDPをただ比較しても、あまり意味はありません。そこで季節的な影響をそれぞれ取り除いて、比較しやすくするのです。
私の駆け出しの頃の話ですが、たかがアルファベット2文字のこの言葉のせいでずいぶん苦労した思い出があります。何ページもあるレポートの中でぽんと一ヵ所、しかも何の説明もなく出てきたことがあって、他に参考になるような情報もなく、ネット上を探しに探してようやくこれだ!と結論できたときには、大きなため息が出ました。
探すと言っても、”sa”だけで検索するとAbout 7,620,000,000 results出てきてしまいますし、まだ駆け出しだったので、何と一緒に検索すればずばり答えが得られるのか分からず、恐ろしいほど時間をかけたような気がします。しかし・・いま「”sa” 国内総生産」と検索してみたら、検索結果上から3つめに「注:SA = 季節調整済み」とありました。あの時の苦労を返してください。