第20回 株式ファンドの四半期運用報告書②
こんにちは。前回に引き続き、ある株式ファンドの四半期運用報告書を読んでいきたいと思います。今回は「運用成績」です。当然ながら、報告書の中で最も重要であり、投資家が最も注目する部分ですので、力を入れていきましょう。
The Fund returned 4.6% with ①all distributions reinvested, for the quarter ended March 31, 2017. ②The Fund’s benchmark, Russell 2000® Index, returned 3.2% in the same period.
①all distributions reinvested
distributionsは「分配金」。株式で言う配当のことです。
投資信託/ファンドなどでは、一定期間ごとに「分配金」(要するに利益の分け前)が支払われるものが多くありますが、逆にまったく分配を行わず、得られた利益をすべて留保/再投資に振り向けるものもあります。
投資家に分配金を支払うには、運用利益から差し引くか、それでも足りない場合は元本(純資産)を取り崩すしかなく、元本が減れば当然ながら運用リターンは下がります。
例:元本100円を運用し、10円の利益が出た場合
1)利益全額を留保 → 純資産=110円
2)10円を投資家に分配 → 純資産=100円
3)5円を投資家に分配 → 純資産=105円
最終的な純資産額から見れば、例1はリターン10%、例2はリターンゼロ、例3はリターン5%になりますが、この間の運用成績は実はまったく同じ10%です。この違いによる混乱を避けるため、投資信託などでは「分配金込み」の運用成績を開示することが多くなっています。
all distributions reinvestedは「すべての分配金を再投資」した場合のことで、「分配金再投資ベースで」などとすれば良いでしょう。
②The Fund’s benchmark, Russell 2000® Index
benchmarkは、第13回でも説明しました通り、ファンドや投資信託が運用の参考(目標)としている指標のこと。日本株式の運用時の参考指標としては、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)がよく用いられます。米国株式市場では「S&P 500種指数」「ダウ工業株30種平均」など。
TOPIXは東京証券取引所の第一部に上場されているすべての銘柄から構成されていますが、日経平均は日本の代表的な企業225社、S&P 500種指数は米国の代表的な企業500社から構成されます。ダウ工業株30種平均(Dow Jones Industrial Average)は「工業」という訳になっていますが、実際には多数の業種が含まれます。
これらは大型・優良株が中心の総合的な株価指数ですが、その他にも時価総額(株価×発行済株式数)が小さめの中小型株をカバーした指数があり、今回のRussell 2000(ラッセル2000種指数)がこれに当たります。米国の運用会社Russell Investmentsが独自に開発した指数で、時価総額の小さい約2000銘柄が含まれます(登録商標ですので®がついていますが、日本語に訳す時には「ラッセル2000(種株価)指数」で大丈夫です)。
課題のファンドは小型株を中心に運用しているため、ラッセル2000指数を参考指標にしている、というわけです。当期はファンドのリターンが4.6%であったのに対し、ラッセル2000指数は3.2%ですから、「ファンドの成績がベンチマークをアウトパフォームした」ことになります。
もう一度、課題を通して眺めたうえで、実際に訳してみましょう。
The Fund returned 4.6% with all distributions reinvested, for the quarter ended March 31, 2017. The Fund’s benchmark, Russell 2000® Index, returned 3.2% in the same period.
【試訳】
2017年1-3月期の当ファンドのリターンは、分配金再投資ベースで+4.6%となりました。また同期、当ファンドのベンチマークであるラッセル2000種株価指数のリターンは+3.2%でした。
※原文に+/-の記号がなくても、日本語訳では付けるケースが多いように思います。