テンナイン翻訳者座談会| 現役翻訳者4名へのインタビュー
はじめに
翻訳の仕事に興味がある方や、これから翻訳業界に足を踏み入れようとしている方にとって、現役の翻訳者がどのようにしてキャリアを築いてきたのか、その実態を知ることは非常に参考になるでしょう。今回はテンナイン・コミュニケーションにご登録されているフリーランス翻訳者4名に、翻訳者のお仕事やテンナインに思うところについてお話を伺いしました。
下記に当てはまる方は、ぜひお読みください。
- 翻訳者になりたいと考えている人
- テンナイン・コミュニケーションに翻訳者として登録しようか悩んでいる人
- 翻訳コーディネーターの仕事に興味がある人
【今回の話し手】
「クライアント様に喜んでいただけることが無上の喜び」
――これまでのお仕事の中で一番楽しかったことは何ですか?
柴田:翻訳会社を通じて仕事をしていると、なかなかクライアント様と直接やりとりできないのですが、そのような中で、クライアント様からお褒めの言葉をいただいたことが一番嬉しかったです。あとは、翻訳をする際に良い表現や言葉が見つかったときには、「よっしゃ!」という気持ちになります。
ーーお客様からのクレームがないことが品質にご満足いただけていることの証ではあるのですが、私たちコーディネーターは翻訳者の方々にもっと積極的に感謝の気持ちや、ポジティブなフィードバックをお伝えしていかないといけないですね。
M・Y:私は、新規案件をいただけるごとに、小躍りしたくなるくらいです。あと、自分が翻訳したフレーズや文がWebサイトに掲載されたときなんかも、嬉しいですね。
「不測のトラブルに備えた準備が必須」
――逆に、これまでの仕事で大ピンチに陥ったことはありますか?
森田:ときどき物理的なトラブルに見舞われることがあります。昔、作業中に雷が家に落ちてモデムが使えなくなってしまったことがあります。納品日だったので大慌てで電車に乗って、データが入ったフロッピーディスクをクライアント様に納品したことがありました。
N: 私は翻訳学校で事務の仕事をしていたときに、いきなり製品の仕様書のようなものを渡されて「今日の5時までに訳して」と依頼されたことがあって大変でした。最終的には間に合いましたが、いつも自分が使い慣れているパソコンを使って作業ができなかったので、なかなか作業がスムーズに進まず焦りましたね。
あと、マウスが急に使えなくなって焦ったこともあります。予備のマウスを持っておくべきであったと反省しました。
柴田:私はそういう緊急事態に備えてパソコンを複数台持っています。通信も普段は有線LANを使っていますが、もしもの時にはスマホのテザリング機能を使うつもりです。
M・Y:私はパソコン、マウス、ソフトウェアなど仕事で使うあらゆるものは必ず2セット持っています。普段使い慣れているツールで仕事をすることが最も生産性が高いため、万が一の時でも通常通り作業ができるように備えています。
――不測のトラブルが起こっても対応できるよう、普段から準備しておくことが大切なんですね。
「自分なりの方法でオンとオフをしっかり切り替えられることが良い仕事につながる」
――翻訳は基本的に常に在宅のお仕事だと思いますが、集中力を維持またはアップさせるために工夫していることはありますか?
柴田:一番簡単なのは、家の中でも場所を変えて仕事をすることですね。別の机やテーブルに移動するだけでも気分転換になります。あとはタイマーを使って適宜休憩を挟んだり、ガムを噛んで脳を活性化させたりすることもあります。
N: 私はピアノが好きなのですが、ピアノコンクールに出場されているプロの方の演奏を聴きながら作業すると、テンションが上がり作業が捗ります。クラシックに限らず、ご自分の気分や好みに合った(歌詞のない)音楽を作業BGMにするのはおすすめです。
――翻訳のお仕事とプライベートのお時間の切り替え方について教えてください。
柴田:私はギターを演奏します。言葉と音楽では脳の使う部分が異なるので、リフレッシュできます。
森田:私は毎朝ウォーキングしたり、週2回ピラティスをしたりと体を動かすことを心がけています。あとは、ビーズも好きです。番号を振って上手く模様が出来上がるようにデザインを考えるのですが、「言葉」とは対極にある「数字」を考えながらする作業は良い気分転換になりますよ。
M・Y:在宅勤務を始めてからルーティンになっているのですが、ヨガやストレッチなどの軽い運動を20〜30分ほどしています。他にもピアノを弾いたり、「数字」でいうと私は高校から大学レベルの数学の問題にチャレンジしたりすることも好きです。
――翻訳は「言葉」を使う仕事なので、音楽や数字、運動など「言葉」から離れたことに没頭することでオンとオフが上手に切り替えられるんですね。
「AI翻訳は完璧とは程遠い。人間による翻訳はまだまだ必要」
――AI翻訳の実態や将来性についてお聞かせください。
N:翻訳業界では、AI翻訳やポストエディットが今後ますます浸透していくのではないかと思います。でも、マーケティングなど翻訳分野によってAI翻訳が使いづらい分野もあるため、これからはAIに頼る分野と、人力翻訳する分野の二極化が進むのではないでしょうか。
M・Y:AI翻訳は完璧ではありません。AI翻訳の誤訳を見抜ける英語力と専門知識の高さ、コンプライアンスなどの時事的な一般教養を持っていれば、AIに仕事を奪われるという心配はしなくてもいいと思います。
柴田:確かに現段階ではAI翻訳はまだまだですね。訳語の統一もできていないですし、曖昧で行間を読む必要がある文書の翻訳は、特に滅茶苦茶な文章になることも多いです。
森田:現段階ではAIは文化の違いや原稿の用途を踏まえた上で、相手の心に響く相応しい表現をすることができておらず、まだまだ人間でないとできないことがたくさんあると思います。また、近年トランスクリエーションの案件が増加しているのですが、現時点ではこの作業にどれほどの市場価値があるのかといったことがまだはっきりしていません。このような新しい翻訳案件などを通じて、翻訳会社と翻訳者が力を合わせて人間がやる翻訳の意義や品質の高さを市場に理解していただける環境を作っていきたいです。
――そうですね。AI翻訳が台頭するようになってから、ユニークな翻訳の依頼も増えてきています。AI翻訳に仕事が奪われる、翻訳業界は終わりと考えるのではなく、AI翻訳が出たからこそ、新たな翻訳業務が創出していることを翻訳業界に興味がある方に知っていただきたいですね。
「翻訳者と言えども、英語力をブラッシュアップするための弛まぬ努力が不可欠!」
――翻訳者には高い英語力が求められますが、皆さんは普段どのようなインプットをされていますか?
M・Y:New York Timesを購読したり、家事をやりながらPodcastやAudibleで音声コンテンツを聞き流したりしています。翻訳に特化したものだと、ハーバード・ビジネス・レビューを読むこともあります。面白い特集の時には、日英両方入手して突き合わせたりしていますよ。
N:私は新聞の社説を対訳で確認したり、話題になっている英語本を読んだりして表現や語彙の学習をしています。また、英語のニュースサイトを読んだり、TEDや興味のある映画を英語で見たりしています。
柴田:私は毎晩7時のNHKニュースを英語で視聴しています。時事英語だったり、微妙な心情の表現などが上手く翻訳されていたりすることがあって良い勉強になるのでおすすめです。あとは、BBCのニュースやVOA Learning Englishのポッドキャストを視聴することもあります。
森田:BBCやVOAのニュースを視聴する他にも、TED ICTという買い切り型のアプリを使ってTED Talksを視聴することがあります。「今は忙しいから10分程度のスピーチを視聴しよう」と都合に合わせてスピーチを検索できるので、便利です。あとは、アート系の翻訳をすることもあるので、美術館や博物館に行って日本語と英語が併記されている翻訳をスマホの音声メモに残して、自宅で単語帳に書き留めることもあります。
――皆さん全員、影の努力があってこその今のご活躍なんですね。
「テンナイン・コミュニケーションのスタッフは丁寧で親切!翻訳者との絆が深い!」
――テンナイン・コミュニケーションのコーディネーションで、何か思うところはございますか?
森田:御社とは10年以上のお付き合いになりますが、毎回指示が分かりやすく、コミュニケーションもスムーズなのでとてもお仕事しやすいです。あと、「テンナインの日」が楽しみですね。これまでにいただいたものは全て大事にとってありますよ。
M・Y:御社のスタッフの方は全員親切で、いつも丁寧なサポートをしてくださるため本当に感謝しております。特に、コロナ禍の時には大変お世話になりました。仕事が少なくなってしまい困っていたのですが、御社の本多さんを筆頭に色々なお仕事を紹介してくださりました。また、御社のグローバルコミュニケーション部の方から、英語コーチングサービス”One Month Program”のお仕事もいただけました。あっという間にお仕事が増えたので、感謝の気持ちでいっぱいです。
N:親しみやすくて素晴らしいお人柄のスタッフさんが多いです。トライアルに合格して会社訪問させていただいたときには、社員さん全員が名刺を持って挨拶に来てくださいました。とてもアットホームな雰囲気ですので、テンナイン・コミュニケーションに登録すれば、初心者の翻訳者の方であっても最初の一歩をスムーズに始められるのではないかと思います。
――たくさんお褒めの言葉をいただき、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
「翻訳の仕事には体力と知識のアップデートが必要」
――今後の展望をお聞かせください。
M・Y:できるだけ長く働きたいですね。80代になっても現役でご活躍されている著名人の方を見ると、憧れを感じます。心身ともに翻訳ができるレベルの自分を維持していきたいです。
森田:私もできるだけ長く続けたいと考えていますが、自分が歳を重ねるごとに言葉に対する感覚が世間とずれていくことを不安に感じます。常日頃から新しいものに触れて、その時代に相応しい表現を探し続けられるようになりたいです。
柴田:あと4〜5年ほど続けたら、老化防止と生きがい探しのために通訳のボランティアにチャレンジしてみたいです。
N:私も頭や体と相談しながら、できる限り長く続けたいです。次のステップとしては、東京から離れて実家に戻り、農業をやってみたいですね。
「翻訳業界に少しでも興味があるのであれば、ぜひチャレンジしてください!」
――最後に、今後翻訳業界に足を踏み入れようとしている方、あるいはテンナインに迎えるかもしれない新しいスタッフに向けて一言メッセージをお願いいたします。
柴田さん:フリーランスにとって最も大切なことは、健康管理です。会社員であれば自分が倒れても他の人が代わりに仕事をやってくれますが、フリーランスの場合そうはいきません。クライアント様や翻訳会社の方に迷惑をかけてしまうことになるため、日頃からしっかりと気をつけていきましょう。
あとは、仕事が途絶えてしまう時期があっても諦めないことと、ネガティブなフィードバックを自分の成長のためになると考えてポジティブに捉えることも大切ですね。
N:人生一度しかないので、やらずに後悔するのはもったいないと思います。翻訳業界に興味がある方はぜひチャレンジしてもらいたいです。頑張っていると自ずと周りから有益な情報が入ってきたり、チャンスが巡ってきたりするものですよ。
森田:これまでの人生における意外な経験が、翻訳の仕事に活かされることもよくあります。そのため、現在どのような経験やお仕事をされていたとしても、翻訳の仕事に結びつく可能性は十分あるので、翻訳者に興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。
M・Y:AI翻訳の普及によって翻訳者の仕事がなくなるのではないかと不安に感じている方も多いかもしれませんが、時代の流れに敏感で上手に対応できるエージェントさんと一緒であれば乗り切れるはずです。英語が好きで、好奇心旺盛な方は翻訳者に向いていると思います。ぜひチャレンジしてください。
――本日は長時間に亘り、インタビューにご協力していただき、ありがとうございました。
まとめ
翻訳者や翻訳コーディネーターのお仕事について、より具体的にイメージできるようになりましたか?
筆者は今回のインタビューを通じて翻訳コーディネーターや翻訳者の仕事の魅力、翻訳会社と翻訳者との強い絆を感じ取ることができました。
さらに、インタビューの途中で翻訳者の方もテンナインのスタッフも涙ぐむ場面も見られ、大変ではあるものの、どちらもやりがいのある仕事であることも伝わってきました。
テンナイン・コミュニケーションでは、一緒に働く翻訳者の方、そして翻訳コーディネーターの方を募集しています。
下記のような特徴を持つ方は、ぜひお問い合せください。
- 人と人、国と国のコミュニケーションの橋渡しをしたい人
- お客様のグローバルビジネスのお手伝いをしたい人
- チャレンジングな環境で自分の力を試したい人
- 英語力を生かしたい人
- 翻訳者になりたい人
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(※)受賞者の希望によっては期間の延長可能
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