INTERPRETATION

本当のリーディングとは?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

先週に引き続き、“リーディング”について考えてみたいと思います。日本の英語教育では、まずリーディングや文法から入るため、自分たちはずっと読む訓練をしてきたという意識があり、とにかく話せるようになりたい、聞けるようになりたいという気持ちも強く、リーディングの重要性の話をしてもなかなか理解してもらえません。

この傾向は特に初心者から中級者に強く、辞書と時間があれば読むのは何とかなると思いこんでいる人がたくさんいます。こういう学習者は”リーディング“=”解読作業“と考えているのではと思うことがあります。極端な言い方をすれば、古代文字を解読しようとしている考古学者のように、難解な文章を、辞書を片手に読み解いていく作業が“リーディング”であると捉えているように思えるのです。

リスニングやスピーキングはコミュニケーションの手段として練習し、うまくなりたいと思う人が多いのに対し、”リーディング“をうまくなりたいという人があまりいないのは、リーディングに対してこういったイメージがあるからだと思います。しかしながら、簡単な日常会話は別にして、ビジネスでは情報収集・分析のツールとして“リーディング”は非常に重要です。内容のある話をするためにも、ネットや新聞・雑誌を読んで情報を仕入れる必要がありますし、音声の情報を理解するためにも、最初に文字で情報を確認しておくのとしないのでは、理解の度合いに大きな違いが出てきます。

本来のリーディングとは、限られた時間の中で情報を正確に素早く取っていくスキルであり、解読型のリーディングのように時間を好きなだけ使って、読むものではないと思いますし、日本語を読んで情報を得るように、英語で情報を得ることをリーディングの目標とすべきだと思います。

ヨーロッパや日本と同じように英語が第二言語の国の人と仕事をするときによく感じるのですが、彼らは英語を学習するために新聞や雑誌を読むのではなく、あくまでも情報を収集するために読んでいます。恐らく彼らの意識の中には、自分たちが英語の学習者という意識はなく、英語はあくまでもツールで、読むということは英語で情報を得るための貴重な手段であると考えているのだと思います。

残念ながら、ほとんどの日本の英語学習者はリーディングを情報収集のツールと捉えていないため、解読型リーディングのレベルで、リーディングなら何とかなると思い込んでいるのだと思います。

これまでいろいろなレベルの方を教えてきましたが、読む力が弱い人はリスニングやスピーキングもある程度で頭打ちになり、全く伸びなくなります。読む力が弱いというのは、語彙力や文法力も不十分で、英語を前から情報処理していくやり方も身についていないということなので、少し長く話されたり、少し複雑な内容になると聞いてもついていけませんし、ましてやそういうことを英語で話すなんて到底無理です。この状態でリスニングやスピーキングの練習をいくらしても思うようには力はつきません。

TOEICのリーディングの方がリスニングよりも一般的に日本人の平均スコアが低いということが示しているように、英語ができない人の根本的な原因は読む力の弱さにある場合がほとんどだと言っても過言ではないと思います。ということで、来週ももう少し“リーディング”について書きたいと思います。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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