INTERPRETATION

皆さん、ありがとうございました!

上谷覚志

やりなおし!英語道場

皆さん、お久しぶりです。実は今回の112回目のコラムをもって、この“やり直し英語道場”を終了することとなりました。今年に入り、定期的にコラムを書く時間を確保できなくなったため、コラムは一旦終了させていただき、また落ち着き時間的余裕ができれば、是非復活して違うコラムでまた情報を発信できたらと思っています。

さて、最後のコラムですが、これまで英語を学ぶということを軸に書いてきましたので、最後は“本当の英語力を付けるためには”について書いてみたいと思います。この答えのヒントは通訳現場にありました。最近の通訳現場を見てみると、昔と比べて英語のできる日本人の数が大幅に増えた気がします。必ずしも流暢にきれいな英語を話せる人ばかりではなく、日本人発音でちょっと文法も怪しいところはあるものの、コミュニケーションを上手に取っている人が増えました。

こういう人たちの多くは、海外経験はなく英語でコミュニケーションをしなければいけない状況に追い込まれ、必死で覚えたというタイプの人が多いようです。私も英語が一番伸びたのは、追い込まれて勉強した留学時と通訳の仕事を始めてからで、学校で勉強していた頃よりも何倍ものスピードで英語が上達しました。追いつめられて覚えた言葉と将来のためにとりあえず覚えた言葉のパワーの違いだと思います。

通訳や翻訳といった言葉のプロを目指すのではなく、英語をコミュニケーションツールとして使いこなしたいというのであれば、最低限の基礎(中学・高校くらいまでの英文法と語彙)がある程度身に付いたら、一旦覚える勉強をやめて、英語を使って何かをやってみるというマインドにシフトすべきだと思います。多くの人が勉強のためだけに、単語を覚えたり、難しい英語の雑誌を読んだり、CDを一生懸命に聞いたりしますが、すぐに伸びが感じられなくなったり、これでいいのだろうかと疑問を感じたりするようになります。そうなると、だんだんモチベーションも下がり、勉強時間も減り、停滞期に突入です。

実際には、かなりの方が“最低限の基礎”はできていると思います。先ほどの現場で覚えた人たちはまさにこのタイプで、最低限のルールや必要な語彙を覚えて、後は伝えるためにどうすればいいかに知恵を注いだ結果、しっかりとしたコミュニケーションが取れるようになったのです。まだ当然たどたどしさはありますが、最初から完璧にできる人なんていませんので、こういう形で言葉を覚えて行く方が自然だと思います。それに対して、TOEICの得点が高くてもきちんとコミュニケーションができない人を見ると“勉強を続けて知識を増やせば、いつの日か英語が自由に使いこなせるようになる”という考え方の危険性を感じます。

以前も書きましたが、英語は学問ではなく、歩くとか、話すとかと同じように体を使って行うスキルなので、“実際にやってみる”という経験が必ず必要になってきます。自分の今の力で、どこまでできるのかを知ることで、逆に今は何ができないのかが明確になり、次にどういう勉強をしないといけないのかがクリアになります。ただ“実際にやってみる”ばかりでもある程度のところで頭打ちになりますので、やってみる→覚える学習→やってみるという繰り返しが必要です。

伸び悩んでいる人の多くは“やってみる”という部分を飛ばして、“覚える学習”を長く続け過ぎてしまうあまり、実際に使ったことのない知識がどんどん増えていき、折角蓄えた知識をどう使かっていいのかわからず混乱している状態なのです。

“やってみる”というのは、実際の仕事の環境がなければできないというわけではありません。何かの英語ボランティアでもいいですし、サークルのようなものでも外国人がいるような場に行ってみるのもいいですし、英語でブログを書く、英語のサイトでショッピングをしてみるのもいいでしょう。本当に何でもいいんです。究極、音読だって立派な“やってみる”カテゴリーに入ると思います。これだけネットが生活の一部になっている環境にいるわけですから、一昔前のように周りに外国人がいないから英語を使う機会がないという言い訳はもはや通用しません。その方のライフスタイルに合った英語環境を選べる時代になったと思います。

たくさんあり過ぎて・・・という方もいるかもしれませんが、そういう方には“まずやってみましょう!”と言いたいですね。何事もやってみないとわからないですし、始まらないわけですから。自分が興味のあることから始めてみてください。英語が使えることにより得られる世界観の広がりをできるだけ多くの方に体感して頂きたいと思いますので、小さな第一歩“まずやってみる!”気持ちを持って頂けると嬉しいです。

最後になりますが、手探りで始めたコラムでは、毎回新しい自分の中の発見があったり、何気なく書いたことに対する予想外の反応に驚いたり、意外な人から“毎週読んでいますよ“と声をかけて頂けたり、人とのつながりが大きく広がった貴重な経験をさせて頂きました。今回で最後というのは寂しい気もしますが、また新しい始まりと捉え、いつか皆さんにまたここでお会いできる日を楽しみにしつつ、最後のコラムとさせて頂きます。

これまで私のコラムを読んで頂き、本当にありがとうございました。そしてこの貴重な機会を与えて頂いた109の工藤さんにも感謝致します。ありがとうございました!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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