これからの通訳者・・・
今年に入ってからの不況は底が見えないと言われるように、どこまで悪くなるのかが全く読めないという恐ろしさがあります。2009年の経済回復は見込めないという見方も多く、回復は2010年以降に持ち越されるという見方が強まってきました。今回の不況でさまざまものが破壊され、変化を余儀なくされてきています。雇用もそうですし、価格もそうです。
物価を見ると、ほんの一年前と比べ多くの商品が下方圧力を受け値崩れが起こっています。ものの場合、原材料、製造コスト、販売コスト、流通コストを始めさまざまなコストを積み上げ、それに利益を加え販売価格を決めていきます。企業は原価を割らないように企業努力で合理化・コスト削減を行い価格破壊に対抗し生き残ろうと必死です。
通訳はどうでしょうか?現在のように景気が悪く、仕事量が減る中でどこまでレートを維持できるのかは疑問です。先日、知り合いの通訳者から、「1時間の会議の通訳を半日料金ではなく、時給でやってくれないかと頼まれた」という話や「半日の会議のウィスパリングを1人でやって欲しいと言われた」という話も聞きますし、あるフリーランスの通訳者はフォーカスグループインタビューの同通を1人(普通は通訳者二人で行います)で数時間こなす人もいると聞きました。
これまでフリーランスのレートは半日料金と終日料金という形で守られてきました。たとえ1時間の会議であったとしても、それまでの準備時間を考えると半日は保証してもらわないと割に合わないとか、その1時間の会議のために他の仕事が取れないという機会損失のリスクを回避したいということが背景にあったと思いますが、現在のようにクライアントの予算取りすら厳しく、予算も限られているという状況が続くとなると、これまで通訳業界で当たり前であったレートの構造も変化を余儀なくされるのかもしれません。
先日ネットで同時通訳のレートを検索していたら、時給レートで同時通訳者を手配しますというエージェントがあることがわかりびっくりしました。レート自体は半日料金を単純に3時間または4時間で割った金額ではありませんでしたが、最初の1時間がXXX円、それ以降1時間ごとにXXX円が加算されるとありました。
今大きく通訳レートが値崩れしているという話はききませんが、さまざまなものの値段が下がっている中、通訳レートだけ影響を受けずに不況を乗り切れると考えること自体甘いのかもしれません。
ただそれだけを憂いていても仕方ないので、景気が回復し仕事量が増え始めた時にいい通訳ができるよう自分の通訳レベルを上げておくよう自己鍛練は積んでおきたいものです。最近では会議出席者の多くが英語ができるという状況の中での通訳も多く、下手をすると通訳者と英語力が変わらないような方が多く会議に出席することも増えており、昔のように通訳者がいないと事が進まないという状況は逆に少なくなっています。それだけ通訳者に対する要求度が上がっていますので、常に勉強をしていかないとこれまで以上に生き残りが厳しい時代がやってくると思います。
(2009年3月24日)
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