INTERPRETATION

超えろ限界!

上谷覚志

やりなおし!英語道場

景気の影響で通訳自体の需要が例年と比べ落ち込んでいるので、これまでできなかったことを少しずつ行っています。“大人のためのやり直し英文法”の準備やTOEICテキストの作成もそうなのですが、去年忙しすぎであまりできなかったジムトレーニングを再開しました。

私の年代の人は軽く汗を流す程度にやる人が多いようですが、私の場合はかなりガッツリやります。トレーナーと一緒に1時間半〜2時間くらいみっちり筋トレです。気持ちいい汗を流して仕事のストレスをすっきり取る程度では飽き足らず、プロのボディービルダーについてもらい(ちなみに、ボディビルをやるつもりはありません)“もう無理!!”という限界まで追い込みます。時には途中で気持ち悪くなり、トイレに駆け込むことも・・・。中学高校で器械体操をやっていたころ以上に筋トレやっているので、周りからは“一体何がしたいん?”と関西弁で突っ込まれ、不思議がられています。

自分の性格上やろうと思ったことはかなり突き詰めていくタイプで、今のところ英語とトレーニングに関してはそういう傾向があります。トレーニングに関しては、これまでもやってきましたし、一時期トレーナーになろうかなと思い、勉強した時期もあるので、普通の人よりは知識はあるので、一人でもトレーニングをしようと思えばできます。トレーナーについてもらいメニューをこなしていく場合でも、ほぼ全て自分が普段1人でやっているメニューと変わりません。

ではなぜ、わざわざお金を払ってトレーナーにお願いするのか?それは1人でトレーニングをしていると知らないうちに、その日の体調と体力から、その日できるトレーニング量を経験から自動的に計算し、これくらいのペースでいけば最後までメニューをこなせるというふうに、逆算してしまうのです。確かにこのやり方だと自分に課したトレーニング量をこなすことはでき、その日の目標を達成することは可能です。ただこうすると、どうしても小さくまとまったトレーニングを確実に行っていくということになり、現状維持か若干向上程度に留まってしまいます。その点、トレーナーにお願いすると、自分一人だったら絶対に設定しないようなウェイトと回数で追い込んでくるので、自分の頭の中にあるsafety zoneがあっという間に破壊され、これまで自分が限界と思っていたラインが一気に行き上げられていくのを感じます。

これって英語にも当てはまると思いませんか?自分で決めた勉強の量や目標値というのは案外自分のsafety zoneに納まるように設定され、本当の限界に挑戦していないのかもしれませんよね。例えば1日1時間勉強時間があるから、“じゃあ〜をしよう!”というふうに目標値を設定してしまうと、その時間内でできることをやるというある意味safety zone内で勉強していることになりますので、飛躍的に伸びるという経験をすることは難しく、どうしても現状維持という結果に終わってしまいます。同じ1時間でも、 “今日は単語を100個覚えて、次の日は同じ時間内で120個、その次は140個・・・”と、どんどん自分に負荷をかけていく(自分の限界に挑戦する)ことが必要です。不思議なもので、人間は“できる” “やらなければ”という気持ちでやればかなりのことができてしまうものです。“できたらいいな〜”とか“とりあえず力が落ちない程度に・・・”という気持ちで勉強するとグルグルと同じところを回っている状態のままです。

通訳の仕事の場合、今日中にこの会議の資料から自分で単語集を作り、それを全て覚えてしまわなければなりません。明日覚えても遅いのです。そういう緊張感というのは勉強にも必要だと思います。己を律し常に緊張状態を維持し、勉強していくことは並大抵のことではありません。そういう意味でも私のトレーナーのように自分のsafety zoneを毎回破壊してくれるような存在は貴重です。それは学校かもしれませんし、勉強仲間かもしれませんし、現場かもしれません。いずれにせよ、定期的に自分を追い込めるような環境に身を置くことは語学力を常に向上させていく上で一つ大きなポイントになってくると思います。確かに“継続は力なり”ですが、safety zone内での継続だけでは、それほどの力にはならないのではと思います。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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