INTERPRETATION

本当の英語力とは?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

みなさん、こんにちは。

突然ですが、皆さん文法は好きですか?通訳をしている人でも大きく分けて二種類いて、“子供のころから自然に英語を勉強して文法なんて考えたことない”っていう人と私のように“普通に日本の学校で文法から入って受験勉強をして”というタイプに分かれるとおもいます。私の場合は、通訳になる前は英語を教えていて文法の問題集を某英語学校で作っていたり、高校生から社会人の生徒さんに教壇に立って教えていたこともあるので、文法は実は嫌いではありません。

どちらかというと“なぜそうなるのか”が理解できないと納得しないタイプだったので、どうでもいいことをいろいろと文法書を紐とき分析していた時期もありました。今から思うと今の自分の日英や日英翻訳を支えてくれているのはそのことに得た知識だったような気がします。

今回、縁あってTOEIC対策のテキスト作成という仕事を頂き、他の先生がまとめてくれた原稿を確認・加筆という作業をしています。テキストは対策編+文法編に分かれていて、文法編ではTOEICを意識した内容にすべく文法解説・問題作成を行っています。TOEICを受けたのも10年前に一度だけで、それ以来いろいろと変更があったようで、最新の傾向はまたかなり当時とは違っているようです。

TOEICを専門で教えていらっしゃる先生や学校は、この文法項目は出るとかでないとか良く分析をされていて、そういう本も巷に出回っています。中には“名詞と動名詞が選択肢にある場合は名詞が正解になる!”といった英語の本来のルールとは全く関係のない情報満載の本もあります。そういう講座を受けられる生徒さんはそういうテクニックを学びたいと思って、本を買うわけですから、本を売るためにはそういうテクニックをたくさん入れた方がいいのでしょうが、私がそういうテクニックを知らないということと、そんなテクニックがあったとしても自分としては本来の英語の正しい理解があれば解けるはずだという思いがあるので入れたくないという気持ちがあります。

TOEICの専門の先生方に出る頻度に合わせてどの文法項目を入れるべきかどうかを話し合って提案してもらった時も、文法項目の並び方がほぼ同じだったことに驚きました。それくらい傾向が偏っていて、それさえやれば高得点が取れてしまうということなのですが、何か違和感を覚えます。30年ほど前、TOEICが始まった当時は本当のコミュニケーション能力を測るためにということを謳い文句にして登場したのが、今全世界90カ国年間で500万人が受けるようになり、日本でも年間150万人以上の方が受験しているそうです。それくらい市場が大きくなり、多くの分析がなされてきた結果、覚えないといけない文法と覚えなくてもいい文法ができてしまいましたし、4つの選択肢から選ぶというテストの特性上テストできる内容に偏りがあるのは仕方ないのかもしれません。

ただ年間これだけ多くの人が高得点を取るためにテクニック偏重の本や講義にお金を払うことに少し疑問を感じてしまいました。本来、きちんと英語を理解すれば小手先のテクニックは必要ないはずと思いますが、皆さんどう思われますか?それをきちんと教えられる先生の数が少ないという現状はあるのかもしれません。

先週のコラムでサイトラ講師の募集について書いたところ何人かの方からご連絡を頂きました。そういう方たちとテクニックに頼らない、本物の力が付くような講座をいろいろなところで少しずつ展開していけたらと思っています。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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