INTERPRETATION

サイトラ講師募集中

上谷覚志

やりなおし!英語道場

急に寒くなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?不況の影響を受けてか、通訳は例年よりもスローな感じがします。この間にこれまでできずにいたことを少しずつ始めています。

このコラムを始めた時にかなり書きました“サイトラ”ですが、今年はこのサイトラを通訳者養成のツールではなく、英語力を伸ばしたいという方やこれまでのやり方で伸び悩みを感じている方を始めとする一般の方に普及させていきたいと思っています。これまでサイトラをもっと多くの人に・・・と思っていながらも、なかなかその取り組みができずに2008年が終わってしまいました。

前回もこのコラムにも書きましたが、この年末年始に一般の方が対象の『サイトラを使ってリーディングを行う講座』を担当しました。サイトラは通訳講座の講師を始めてからずっと英語を勉強する上で重要なポイントして位置づけ教えてきましたが、対象者が通訳になりたいという方達で高度の英語力をすでに持っている方ばかりでした。今回、一般の方ということでTOEICのスコアが、下は300点程度の方から受講されていました。理論的にはどのレベルの方にでも有効であるという確信はあったものの、このレベルの方にサイトラを教えて役に立つのかどうかはある種賭けのような部分がありました。

実際の授業ではサイトラ以外に、音声を流してのディクテーション、そのスクリプトの音読、シャドウイングという流れで音声的な訓練も取り入れることで、サイトラ的に前から情報を理解し、その流れで音声の情報処理を行う感覚をつかんでもらうことを目指しました。

最初はサイトラをしてもらっても、どこで区切っていいのかがわからなかったり、後ろから返り読みすることに慣れている人にとっては、若干の抵抗はあったようですが、読み進めていくうちに、徐々に情報を出てきた順番に読んで理解するというプロセスにも皆さん慣れてきました。中には日本語に訳すことに抵抗を感じている方もいましたが、今回の授業は通訳訓練ではないので、正しい日本語ではなく、区切りそれぞれがどういう意味だと思ったかを説明してもらうという形にしました。

例えば

”… will share the 2007 Nobel Peace Prize with the United Nations Intergovernmental Panel on Climate Change”

という表現が出てきて日本語が分からなくても、それは英語のままでもよしとし、

”2007年Nobel Peace 賞を共有します/ the United Nations Intergovernmental Panel on Climate Changeとともに“

でOKとしました。わかる人は“2007年度ノーベル平和賞を共有します/国連の政府間パネル/気候変動に関する(パネル)とともに”というという風に出してもらい、訳にかなり柔軟性を与え、構文の中でそれぞれの語句がどういう役割を果たしているのかを捉えてもらうことを重視しました。

次に音声を使ってサイトラで区切ったところまでを流し、その部分だけでどういう意味かを音声だけを聞いて答えてもらうという練習をしました。この練習では、目で見たサイトラの感覚を音声でも体感してもらうことを狙っています。この練習を続けていくことで、音声を聞いて最後に聞いたことだけしか頭に残っていないというようなことはなくなりますし、全体として均等にかつ正確に情報を捉えることができるようになります。実際このクラスでは、サイトラをしたあとに音声サイトラをすることで、これまでは言葉が一瞬にして流れていっただけだったものが、前から少しずつ情報を捉えることで全く何を言っているか分からないということも少なくなり、長い文章でもある程度対応できるようになりました。

受講前と比べて実際にTOEICのスコアがリーディングだけで150点伸びたという方もいらっしゃったので、サイトラをしっかりと理解して実践し、それを音声領域にまで広げていくことでTOEICのスコアは言うに及ばず、総合的な英語力を上げていくことが、英語力がそれほど高くない人にとっても有効だということが確認できてホッとしました。

これからサイトラをもっといろいろな場に展開していきたいと思っており、現在サイトラを教えてみたい方を募集しております。サイトラを体験してみたい方も大歓迎ですし、サイトラを教えたことのない方でもできるようになるまで指導します。ご興味のある方はぜひご連絡ください。

また今後も折を見てサイトラについて書いていきます!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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