考えるは thinking about?
皆さん、2009年が始まり早や2週間が経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか?メディアで報道されているようにいろいろなところで暗い話ばかりが耳につきますが、こういうときこそ次のチャンスに備えて忙しい時にはできなかったことをやりたいものですね。
さて、先日約3ヶ月間の短期英語集中講座の一部を担当し、英語を使いこなすための基礎訓練をしてきました。普段TOEICの勉強をされている方たちなので、あえて試験対策ではなく英語のブラッシュアップのための授業をしようと考えていたのですが、1クラス30人近くの人数とレベルもバラバラという条件もありさてどうしたものかと考え込んでしまいました。大切なことはたくさんあり、どれもそれぞれ重要なのですが、あえて動詞に絞って3日間授業をすることにしました。
その理由は、ご存知のように英語の文は主語の後に動詞がきて、文章が構成されます。英語の場合、その動詞の部分で時制を決めて否定肯定を示し、その後に続く構文を決めていくので、そこで間違うとその後に続く文章がぐちゃぐちゃになってしまいます。この動詞でつまずく人が非常に多いのです。
通訳訓練を受けているようないわゆる英語のできる人たちですら動詞で躓くことがよくあります。自動詞と他動詞の区別が(頭の中では分かってるのかもしれませんが)できなかったり、動詞の用法を十分把握していなくて適当に前置詞をくっつけてみたりといろいろな問題があります。またある程度のレベルの人で単語を丸覚えしてきた人によくあるのが、日本語をそのまま英語にして、それをそのまま使うケースです。これは通訳訓練を受けているような人でも頻発します。
例えば先日、次のような文章を通訳の授業の中で使いました。(インタビューで司会者が市場の再編に際して)“社長はM&Aを行うこと考えていらっしゃり・・・”という日本語で、それを通訳のクラスの中で英語にしてもらったのですが、“The president is thinking about doing an M&A…”という訳された方がいました。社長=president、考えている=thinking aboutだから、そう訳されたのだと思います。もちろん文法的には全く問題ありませんが、“考える”はいつもthink aboutではないですよね。Thinkという言葉は“考える”という意味を一番広く表現できる動詞ですが、いつも日本語と1対1の関係というわけではありません。
このケースの場合は、“社長が市場の再編に当たりM&Aを考えている”をthinking aboutと進行形にすると、何となく“M&Aね〜どうだろうな〜”といった風に頭の中でだけ考えているイメージになってしまいます。経営者として再編に対応するためのM&Aを一つの選択肢として検討しているという意味で、自分ならconsiderを使うと思います。それからdoing an M&Aのところも“行う“という言葉があるからdoingを使ったのかもしれませんが、considerという動詞を使うのであれば、シャープに表現するためdoingなしで直接M&Aを持ってくると思います。社長が大きなM&Aという決断を下す前に真剣に考えている(=検討している)という気持ちを表すために、The president is considering an M&A…とすると思います。
もちろん実際のところ社長が頭の中で“M&Aどうしようかな〜”と思いを巡らせているのかもしれませんから、どちらがいいとは言えませんが、少なくとも日本語から英語に直す時は(特に動詞は)、単純に言葉の置き換えだけではうまくいかないことが多いので、日頃から日本語から英語に置き換えて、その英語の表現がどういう風に使われるのかを英英辞典や活用辞典で調べたり、ネットで用例を確認するという手間を惜しまないことが必要だと思います。
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