INTERPRETATION

資料なしって当たり前?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

こんにちは。

先日の仕事のことです。セキュリティーに関する技術者向けの二日間の研修の通訳の仕事をしたのですが、いつものごとく前日の夜9時に資料の最新版(50ページくらい)がメールで送られてきました。予想外に変更も少なく今日はとりあえず寝て明日の打ち合わせに臨めるとひと安心。質問箇所にマーカーと付箋を入れて会場入りし、スピーカーとの挨拶もそこそこに質問開始しようとしたとき、スピーカーから“今朝3時までがんばって書き換えたんだよ。これ最新版でこっちを今日と明日の午前中使うから・・・。で質問ある?”と言われました。開始まであと20分くらいで、また内容が全く違う50ペー ジくらいの資料を手渡され真っ青!これまで準備してきたのは何のため???いつこの資料を使うって決められたんだろう?なんで昨日資料の最新版をメールしてきたときに、一言連絡してくれなかったんだろう?といろいろなことを考えながらも、会場に人がどんどん入ってくる中、通訳者席でパートナー通訳と必死でサイトラ。読んだというよりも、ページをめくって、さっとみてわからない用語だけをとりあえず調べるのが精一杯でした。最後の5分くらいでパートナーと用語の確認をして、本番に入りました。

以前社内通訳をしていた時には、いきなり呼ばれて通訳というケースは結構ありましたが、フリーランスになったらきちんと資料はもらえて、ブリーフィングをしてもらって通訳できると思っていました。しかし現実はそうではないことも多々あります。特にビジネス系の通訳の場合、ぎりぎりまで資料を作成するクライアントも多いので、そういう場合だと 当日内容変更というケースもあり、ひどい時など1日7本のプレゼンを2名体制で通訳をするという案件で、当日資料全部差し替えということもありました。当然、エージェントとクライアントにはこの状況での通訳のクォリティを保証できかねるという話をしますが、“そこを何とか・・・できる限り頑張っていただいて・・・”と言われるばかり。

プレゼンを聞くために集まった人にそんなことは言えませんから、必要以上の負荷の中で通訳をすることになります。全部差し替えというのは極端な例としても、現場入りして話が違うというケースはかなりあります。

通訳訓練をするときに、全くの初見で通訳をしてもらうことがあります。ほかの学校であれば、事前に単語リストを配布し、関連資料を渡すことがほとんどだと思いますが、よくよく考えると、 実際の通訳の場でほぼ初見に近い状況で通訳をすることも案外と多いので、単語リスト等なしで通訳訓練をするということも必要だと思いました。

といいつつ、今から事前資料がでないインド人技術者とのテクニカルプレゼンを電話会議で行う仕事に行ってきます!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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