INTERPRETATION

基礎はサイトラから

上谷覚志

やりなおし!英語道場

こんにちは。

先々週の土曜日と先週の土曜日に英日のビジネス関連記事を使い、サイトラのワークショップを行いました。今回はレギュラーコースの生徒さん以外の方にもご参加頂きました。私のやっている学校(Accent on Communication)にお越しいただく方は“サイトラをやってみたいから”、“ビジネス通訳をやりたいから”とおっしゃる方が多いのですが、いろいろな方からお話を伺うたびにサイトラを授業としてやっているところはまだまだ少ないんだなと感じています。

書店でもスラッシュリーディングという名前でサイトラに関して書いている本もありますし、通信教材でも同時通訳方式という名で教材を販売されていますが、実際の授業の中でサイトラを定期的に行っているところは案外ないんですね。最近は、通訳学校でもサイトラをきちんと取り入れているところは少ないというのは驚きです。やはり通訳訓練となると音声を聞いて逐次訓練をやったり、同通訓練をやるといったいわゆる“通訳訓練”というのが主流のようです。生徒さんとしても早く通訳になりたいという気持ちが強いでしょうし、逐次や同通の訓練をしている方が何となく通訳になるという目標に近づいているという安心感や満足感があるのかもしれません。

通訳というのはある意味、体で覚えるスキルだと思いますので、“たくさん聞いて訳す”という訓練をして慣れていくことも確かに重要です。ただそれはかなり高度な語学運用能力がある人の話で、リスニングが弱いとか、日常会話はこなせるけど英語の理解がまだまだ不十分な人にとって本当に通訳訓練をたくさんこなすことで力が付くのかどうか疑問に思うことがあります。

通訳訓練をたくさん行う中で、リスニングや英語の理解力もアップしていきますが、逆に遠回りになる場合もよくあります。結局逐次訓練をしても、きちんと聞き取れないのであれば、わかった単語をつなぎ合わせて訳にするわけで変な癖だけがついてしまうことも珍しくありません。

TOEICの点数が高いとか、少し通訳をした経験があるとか、日常会話はうまくできるとか、といった人はすぐに通訳訓練に入りたいとおっしゃる方が多いですが、実際に通訳訓練だけで伸びていくレベルの方は案外少なく、サイトラを行うことでもっと基本的な“英語を正確に理解する”という基礎訓練が必要だと思います。基礎訓練と書きましたが、“基礎”というのは“簡単な”という意味ではなく、 “通訳訓練に入っていくために必要な”という意味での“基礎”と捉えていただければと思います。

通訳訓練で伸び悩んでいる方、どうしても通訳訓練を始めるところまで行けない方は、思い切ってサイトラの時間を増やしてみてください。最初は英日サイトラを行い、かなり力が付いてきたら、今度は日英のサイトラにも挑戦すれば、通訳訓練を行う基礎力が付くと思います。がむしゃらに通訳訓練に時間を使うよりも、自分の基礎力に不安があるのであれば、サイトラで基礎固めをしてみてください。正しいやり方でしっかりとサイトラをすれば、比較的短期間で成果を実感できると思います。

私の学校(Accent on Communication)のHP内で『サイトラ道場』というページでサイトラを体験していただけます。もし今までにサイトラを余りやったことがない、またはサイトラのやり方が分からないといった方はぜひのぞいてみてください。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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