好きこそものの上手なれ
今週は大阪の実家からこのコラムを書いていますが、オリンピックを見ながらなので、なかなか進みません。私自身、中学や高校6年間器械体操をやっていたこともあり、体操開催中は全てを中断して集中です(笑)。体操の採点方法や技のレベルも大きく変わりましたが、体操を見るたびに自分がやっていた頃にフラッシュバックしてしまいます。
派手に見える体操も結局は地味な練習の繰り返しで、同じ動作を何百回何千回も繰り返し、小さな技を今度は連続で行い、それをまた別の技につなげる練習を繰り返すのです。
体操は採点競技なので、技が出来るだけでは十分ではありません。いかにスムーズに、大きく、かつ美しく演技を行うかが得点に大きな影響を与えます。
鏡の前で、またビデオで演技を撮影し、足先や指先の動きや、姿勢や目線といったあらゆる動きを確認していきます。このように試合で演技ができるようになるまでには、一般の人の想像をはるかに越える時間をかけて練習していくのです。
一般の人からすると、あんなくそ暑い体育館で毎日毎日練習し、手の皮がずる剥けになり、軽〜く脱臼したり、筋が切れたりと、体がボロボロになるのに何が楽しいの??って思うと思います。
体操の怪我はハンパではありません。
例えば、鉄棒で大車輪中に手が離れてぴゅーっと先輩が目の前を飛んで、体育館の窓から逆スーパーマンのように飛んで行ったこともありました。また女子の床でバク転を連続後に宙返りにつなげる技のはずなのに、両手をつけず、頭から床に激突!ブレーンバスターを自分にかけるかのなと思うほどの“大技?”(ただし加点ゼロ)を意図せず披露し、最後には“泡吹きフィニッシュ”で得点を待たずに担架で運ばれたりなど、こんな話は山ほどあります。
私が、ここまでの練習に耐え試合に出られたのは、もちろん身体的に体操に向いていたということもあると思いますが、それ以上に地味なことも含めて”体操”が好きだったからという部分が大きいと思います。
何でもそうですが結局、最後まで残り極めて行く人は必ずしもその分野に秀でた人ではないと思います。その分野の派手な部分だけではなく、地味な練習にも楽しみを見出だし続けられる人だと思うのです。
通訳学校で教えていると、トライアルで来られる方や勉強を始めたばかりの方に“どれくらいで通訳になれますか?”と質問されることがあります。本当は、こういった質問をされる前に通訳になるための地味な練習や背景知識修得のための調べものを好きかどうかを自問した方がより正確な答えが得られるのではないかと思います。本当に“もの”になる方は、そういう質問をすることなく、好きで勉強を続けた結果気がつけば通訳になっているような気がします。“通訳や英語がものになるかを今気にするより、そこに到達するためのプロセスを楽しめるかどうか”を考えてみた方がいいのではないでしょうか?
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