INTERPRETATION

声飛ばせますか?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

以前のコラムでボイストレーニングを始めたことを書きましたが、今回は経過報告です。

もともとボイストレーニングを始めたのは、自分の日本語を録音したときの滑舌がひどかったのと、早口をなんとかしないと思ったのがきっかけでした。

週1回(2時間)のグループレッスンを始め、3ヶ月ほどが経ちました。自分の声がどう変わったのかを実感するのはなかなか難しいですが、レッスンを始めてから声を出すというこれまでほぼ無意識に行ってきた行為を意識し、発声がうまくできているかわかるようになってきました。よく腹から声を出すといいますが、私の通っている学校では胸で音を共鳴させて出すという練習をします。最初のフェーズでは、“声帯や体をゆるめて、響かせて音を出す”ということに焦点をおき、現在の第2フェーズでは、“音を飛ばす”という練習をしています。“音を飛ばす“というのは不思議な表現ですよね。最初、先生が「声を丸いボールのようにして飛ばしましょう!」と言われ、実際に丸いボールの場合と楕円の場合の例を示していただきました。聞くと確かにそういう感じがしてくるから不思議です。

キャッチボールでもそうだと思いますが、直球を自分目掛けて投げられると、ひょっとして自分のこと嫌い?って思います。けれども自分の取りやすいところに放物線を描くように投げると自分のことをちゃんと考えてくれているだと感じ、キャッチボールが和やかに楽しめるのと同様に、コミュニケーションも声をどう飛ばすのかによって人が受ける印象が変わってくるそうです。

私はまだ声を飛ばすというところまではいっていないのですが、先日クラスでペアになり、1メートルくらい離れて向かい合い、“あっ”という音を相手に投げるという練習をしました。「その時にパートナーの声がどこに落ちたのか、頭の上を越えたのかを教えてあげてください」と先生から指示があり、“声が落ちる?そんなんあらへんわ?声は聞こえるもので、どこかに落ちるなんてないない”とかなり半信半疑で練習を開始。自分が最初声を出す側だったので、パートナーの方が「届きました」とか「頭の上越えました」とか「ここに落ちました」とかコメントするのを聞いて、“え〜そんなことあるん?ボールちゃうねんで”と思いつつ、いざ自分がコメントする側になると、確かに飛んでます!その時々で目の前に落ちたり、頭の上を越えたり、真正面に飛んできたりと距離や方向が毎回違うんですね!!驚きです!!!!

先生の話だと、このスキルをマスターすると、飛ばしたい場所に声を張り上げることなく、声を飛ばすことができるようになるそうです。例えば人ごみで遠く離れた友達に話しかけるときもこのスキルを使うと叫ばすに友達を振り向かせることができるのだそうです。

通訳に対するクレームの一つに“よく聞こえない”とか“通らない”というものがあります。確かに内容は合っていても、言ってることが聞こえないと意味がありませんよね。現場に行ってみて、会議室が思ったよりも大きかったり、天井がやたらと高く音が分散してしまうことがたまにあります。急遽マイクを用意してもらえるといいのですが、そうでない場合は声を張り上げることになりますが、こういうスキルを身につけていると声帯かかる負担を軽減しながら話せるので、次の日の仕事にも影響が出ませんし、何よりもクライアントに情報がきちんと届く=顧客満足度向上という点でも意味があると思います。またクラスでは声枯れを防いだり、声のスタミナをつけるストレッチも毎回行いますので、声の調子を整えるという意味でも始めてよかったと思っています。

最後にまだトレーニングを始めて数ヶ月ですが、入学(4月27日)してすぐに自分の声を録音し、6月29日にまた声の変化を見るために同じ文章を録音しました。その結果データを下に貼り付けますが、下の方が入学時(4月)のもので、上の方が6月末のデータです。横幅が大きいほどゆったりとした呼吸で話せており、縦の幅が大きいほど声の響きのヴォリュームが大きいことを示しています。たった2ヶ月ほどのトレーニングですが、明らかに違いますよね。同じ文章を読んだにも関わらず、声の響き方が全く違うことがわかります。自分で聞こえる音量はそんなに変わっていないような気がするのですが、人が自分の声を聞いたときに、どれくらい聞きやすいか、どれくらい聞き返えされるかに違いが出てくるのだそうです。

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まだ始めたばかりですが、声のメンテも心地いいし、少しずつですが違いが出てきたことが実感できたので、継続してみて1年後にどれくらい自分の声が変わるのかが非常に楽しみです。また数ヵ月後に変化があれば報告します!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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