自分を支えてくれる言葉
生きていく中で、ふっとこれまで 誰かが言った言葉を思い返すことはありませんか?その時は意味がよく判らなかったり、ピンとこなかったのに、ある時突然“そういうことだったのか!”と 気付くことがあります。またうまく行かないときに思い返す言葉もあります。他人が聞くと、何の変哲もない言葉なのに、なぜか思い返してしまう言葉を今日は ご紹介したいと思います。
私が大学4年の時、中国語を少しだけ習っていた時期がありました。先生は日本人で、あとでわかったのですが、某大手通訳エージェントの専属の英語通訳者でもありました。その時はまだアメリカに行く前で、自分がのちに通訳になるなんて想像すらしておらず、英語も日常会話すらおぼつかない程度だったので、無邪気に“通訳なんてすごいですね!”と雲の上の人をいるような目で話を聞いていました。
もう15年以上前の話でどういう話をしたのかほとんど覚えていませんが、先生が“まあこうやって通訳をずっとやってきていましたが、うまくいくこともいかないこともあります。真面目にできることを誠実にこつこつ積み重ねてきただけで、やっと最近自分のことを通訳と呼んでもいいかなと思えるようになってきました。”とおっしゃっていました。
気がつけば10年近く通訳をやってきて、最近先生の言葉をふと思い出し、そういうことだったんだと理解できたような気がします。
日々通訳する中でうまく行く日も あれば、そうでない日もあります。そういう時に結果云々ではなく、できる限りのことを誠実に行うことだけに注力し、次は少しでもいい通訳ができるよう地道に努力するしかないんだという意味でこの言葉を言っているのだと思います。まだ駆け出しの頃は、チャンスさえ与えられたら何とかできるはず!と思っていた時期もあり ましたが、今こうして振り返ってみると結局は一足飛びでここまできたわけではなく、日々悩みながら、一喜一憂しここまできたのです。
華々しい大きな仕事をすることよりも、日々身の丈にあった仕事を誠実にこなしていくことで、経験も信頼も高まり、チャンスがきたときにそれをつかめるよう精進していくしかないんだなと最近しみじみ感じます。
また、通訳がうまく行かなくて落ち込んだり、内容が難しくてできるかどうか不安になったときに思い出す言葉があります。親友のカナダ人が言った何気ない一言“You only get better every time you do a new assignment.”もよく思い出します。失敗は嫌なものですし、できるかどうかわからないような通訳を引き受けてしまったときは気が重いものです。うまく行こうが行くまいが、できる限りのことをして臨んだ案件であれば、必ず何かを学べますし、次は同じ間違いをしないようにさえすればいいんだという気持ちで仕事に臨むようになり、以前ほど結果に対するこだわりや気負いが少なくなったような気がします。肩の力が抜けたといってもいいのかもしれません。
フリーランス通訳という仕事は誰かに定期的に評価されるわけではなく、自分が伸びているのか自分のこのやり方でいいのかわからなくなることがありました。もちろんクライアントやエージェントの評価はありますが、必ずしも純粋な通訳スキルが評価されているとは限りません。そういう時に、こういった何気ない言葉をふと思い出します。これからもまたこういった基本に立ち戻り、昨日より今日、今日より明日と少しでも通訳者としてのスキルを上げていければと思っています。皆さんにはそういった言葉 ありますか?
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