通訳学校はいつまで必要か?(2)
前回のコラムで通訳学校はいつまで行く必要があるのか?というトピックで書きましたが、今回ももう少し“学校に通う”ということについて書いてみたいと思います。
多くの人が“通訳学校に通う”ということである種の安心感を抱き、“ここに通い続ければ、いつかは通訳になれる”と“通うことに意義がある”という風に信じているようです。海外留学したら英語ができるようになるわけではないのと同様に、通訳学校に行くだけで通訳スキルが身に付き、通訳になれるわけではありません。 本人がどれだけ自分の課題に取り組み、上を目指すか次第でどれだけ早く通訳になれるかが決まると思います。
というと“そんなこと当たり前じゃない?”と思われるかもしれませんが、これができている方は残念ながらあまりいません。どうも学校に一旦入ると、“参加することに意義がある!”と思ってるのでは?と思うことがあります。
これを端的に表しているのが宿題です。記事を読んでサイトラしてくるとか、指定されて範囲の単語を覚えてくるとか、逐次の練習をしてくるとかでも、最初は全力で取り組み授業に臨まれていても、回を追うごとに、“恥をかかない程度”にしか宿題をこなさなくなる人が増えてきます。他のクラスメートもこのくらいしかやってこないから、これでいいだろうという意識が働くのかもしれません。
宿題にどれだけ時間をかけたかはすぐにわかります。例えばサイトラなら訳を聞いただけで、どれくらい訳語を考えるのに時間をかけたのか、家で声に出して練習したのか、背景知識の確認をしっかりやったのか、などは訳した瞬間にわかるものです。
“恥をかかない程度” “クラスメートと同じ程度”という間違った基準に自分の学習目標を引き下げた状態で、学校に通っても思ったような結果は得られません。せいぜい現状維持ではないでしょうか?
通訳学校は教材の答えをもらう場所ではなく、自宅で準備したことを発表する場だと思います。まだ現場に出られない人が通訳の疑似体験をする場と捉えれば、宿題で手を抜いて授業に臨むというのは、もらった資料を読まずに通訳の現場に出ていくようなものです。いつ通訳デビューのチャンスがくるか回ってくるか分からないわけですから、せめて宿題くらいこれ以上はできないくらいといった気持ちで取り組んでもらいたいものです。
もちろん宿題をする中でわからないことや、いい訳が思いつかないこともあると思います。ぎりぎりまで考え抜いてわからないなら全く問題ありませんが、”あれ?ここ訳せないなぁ。まあ授業で答えきけばいいかといった参加重視型の人は必ずといっていいほど同じ間違いを繰り返します。結局、あまり考えずに答えだけもらっても、時間が経つと忘れてしまいますし、応用もききません。
学校ではスラスラと訳しながらも、自宅では泥臭い勉強を続け、自分でとことん調べ抜く姿勢が大切で、周りはこの程度だからこのくらいの準備でいいやという考え方は捨てて、自分がクラスのレベルを上げていくくらいの意気込みでクラスに臨んでいただければ、どんどん力がつき、通訳の仕事を始められると思います。
すでに通訳デビューされた方もそうです。“これくらいでいいかな”と自分で思った瞬間成長は止まり、この程度の通訳で終わってしまいます。先輩通訳者が貪欲に勉強されているのを見たり、他の通訳者の素晴らしいパフォーマンスを聞くと、“もっと上を見ないと”と反省させられます。
毎回完璧な準備をして臨むことは難しいとは思いますが、限られた時間の中でできる限りのことをして授業に臨む真剣さと、学校に通っていることに安心しすぎず、常に上を目指す姿勢は忘れないでいたいものです。
学校に通っている方もこれから通うつもりの方も、学校に行くことが目標ではなく、どれだけ自分が本気で取り組むか、上を見ることができるか、を再度自分に問いかけてみる必要があるのではないでしょうか?
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