明日は金曜日だろうね?
ここ何回かのコラムが通訳ネタだったので、今回は英語学習について書いてみたいと思います。
先月から、Accent on Communicationの授業が始まりました。先学期くらいから少しずつ通訳デビューを果たした生徒さんが出てきて、今期も通訳デビューできそうな方もいらっしゃいます。生徒さんが力を付け、通訳者としてマーケットに飛び込んでいかれるのを目にするのは講師にとって本当に幸せなことです。
いろいろな方を教えていく中で、感覚的にこの人は“センス”のある人だなと思うことがあります。感覚的なものなので今まであまり深く考えたことはなかったのですが、先日あるメールを受け取り、語学のセンスってなんだろうと考える機会がありました。
私の友人の中に、日本の大学に通っている20歳のアメリカ人がいます。彼は1年前から交換留学で来日し、日本語や日本文学を勉強しています。真面目に日本語を勉強しているのですが、一向に上達しません。先日ご飯食べに行く話をしていて、その確認で“会うのは金曜日だよね?”と言いたかったらしいのですが、彼のメールは“明日は金曜だろうね?”でした。1人で大笑いし、“明日はたぶん金曜日だろうね・・・”とレスしました。彼のメールはいつもこんな感じで、一年日本にいて大学で勉強し、日本語に触れる機会がいたるところにあるのに、日本語が上達しないのは語学センスがないのではと思ってしまいました。文法的には間違っていないのでしょうが、日本人なら思いつかない日本語ですよね。
時間をかけて文法も勉強し、漢字も覚えているにも関わらず、こんな簡単なことすら言えないのはなぜなのでしょうか?
別の友人で、2週間ほど前にオーストラリアから来てこれから日本語学校に通おうとしている人がいます。オージーの友達のところで居候しているので、日本語に触れる機会はそれほどないにもかかわらず、会うたびに話す日本語が最初は単語だけ、その次に会ったときは句になり、最近では簡単な文章で話せるようになってきました。もちろん来たばかりなので、話せるといってもシンプルな内容なのですが、確実に話せる内容は高度になっています。明らかに文法知識や語彙レベルではアメリカ人の友人の方がはるかに上ですが、数ヶ月もすればオーストラリア人の友人の日本語の方がうまくなるでしょう。
同じような現象が通訳のクラスでもよくあります。文法や語彙レベルはまあ悪くないのに、簡単なことが言えない人が結構います。また同じような間違えをずっと繰り返す人もいます。これは知識の量の問題ではないと思います。誤解を恐れずに言うと、語学のセンスの問題のような気がします。
同じように記事を読んできても、“アメリカ人”タイプの人は辞書で単語を調べて、訳して終わりで、新しい知識として覚えてしまおうとします。“オーストラリア人”タイプの人も単語は調べますが、これまで学習した知識を総動員します。
例えば“この単語はこの前〜で使われていて、その時は・・・っていう文脈で・・・という意味だったよな“とか、“〜という言い方ができるのなら、・・・という風にも言えるはず“など自分の持っている知識を読んだり、話したり、聞いたりするたびに更新していき、自分の知識が間違っていたら修正し、それをまた使ってみるというアクティブなアウトプットを常に行っています。間違ったことは納得するまで分析し、理解したら自分の知識を更新していくので、同じ間違いを繰り返す確率はかなり下がり、ネィティブならこういう風には言わないとか書かないといった感覚(センス)を磨くことが出来ますが、アメリカ人タイプは毎回間違った情報を新規情報として単純に覚えようとするので、よほどの記憶力がない限りは、同じ間違いを繰り返す確率は高くなります。
センスとは才能だけではなく、後天的に磨くことができるものだと思います。読んだり、聞いたりといったインプットをするときに、なぜこういう風に書かれているまたは話されるのかを自分の持っている知識ベースを比較分析し、必要に応じて更新された知識をなるべく早く試してみるという意識的な努力でかなり改善できると思います。特に英語を書くまたは話す力がなかなか付かないと感じている方は一度アメリカ人タイプになっていないか確認してみてください。
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