INTERPRETATION

2008年はSMARTに

上谷覚志

やりなおし!英語道場

以前“むかしむかし・・・”ということで、私がアメリカに留学した当時、発音がひどくいろいろと試したという話を書きました。ただひどかったのは発音だけではなく、読む、書く、聞く、話す全てにおいて課題だらけでした。今から考えるとそれはもっともなことで、日本で普通に義務教育、大学でも専攻は英語とは無縁の経済学、普段英語に触れる機会など皆無という環境からいきなりアメリカに飛んだわけですから、授業もわからず宿題も何か分かりませんでした。また普段の生活の中で言いたいことがうまく言えなかったり、アメリカ人の友達ができても言ってることの半分くらいはわからないということも最初はよくありました。

23歳になって受験英語から脱却しようとしたわけでしたから当然です。

留学したことのある方ならわかると思いますが、海外に住んでいたからって自動的に英語ができるようになるわけではなく、かなり意識的な努力をしないと長くいた割には、案外英語ができないまま帰国することもよくあると思います。

海外で生活を始めると、個人差はあるにせよ、最初の一年くらいは生活で必要な最低限の表現を吸収し、環境に慣れていく過程で英語をすごい勢いで吸収していきます。ところが会話に困らない程度の英語力が身につくと、急に学習カーブが緩やかになってきます。一年間海外にいた人と三年間海外にいた人と比べた場合、後者が前者の三倍英語ができるかというと実際はそうではないですよね。

このことは留学という特殊な状況だけではなく、普段の英語の学習や通訳訓練にも当てはまると思います。例えば海外転勤や昇進試験や外資系に転職するといった仕事上の緊迫した必要性がある場合や、付き合い始めた相手が外国人で・・・といった私的必要性がある場合、一気に学習速度が上がっていきます。一方、“いずれは通訳に・・・”とか“英語がぺらぺらになれたらいいな”といった緊急性の低い場合だとなかなか必要な語学力を身につけることはできません。それに加えて、“英語を話す機会がない”から伸び悩んでいるという話もよく聞きます。

では留学といった緊急性の高い状況がなければ本当に語学上達しないのでしょうか?最終的にはその人が語学力アップということにどれだけ重きを置くかによると思いますし、意識の持っていき方によってかなり変わってきます。よく企業トレーニングで“SMART Goals”の話が出ますが、それを英語の学習にも適用できると思いますので、ご紹介します。

S (specific 具体的で)

M (measurable 数値化できて)

A (attainable 達成可能で)

R (realistic 現実的で)

T (timely 時間の縛りがあって tangible 成果が目に見えるようなもの)

という基準で目標を設定すべきであるということなのですが、これを語学学習にも使ってみるといいと思います。例えば、“ぺらぺらになりたい”“簡単な通訳ができるようになりたい”“字幕なしで映画をみれるようになりたい”といった曖昧な目標で英語の勉強を始めると結局成果を実感できないまま終わってしまうと思います。“ぺらぺら”“簡単な通訳”とは何かという具体性にかけるという点で目標としては適切ではありません。“字幕なしで英語をみれるようになる”というのは具体的ではありますが、“数値化できる”“時間の縛りがある”という観点が欠けているので、こちらも目標としては適切ではありません。

皆さんの目標はどうでしょうか?一度書き出してみて、上記のSMARTという基準を全て満たしているかどうかを確認してみてはいかがでしょうか?具体的な目標が決まると、それを達成する手段も決まってきます。あと二週間で2008年が始まります。多くの方が新年を迎えるにあたり、その年の抱負や目標を決めると思います。そのときに是非SMARTゴールのルールを活用していただき、来年は今年以上の実り多い年にしましょう。

Written by

記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

END