おもいっきり日本人英語!
先週は無謀な出まかせを言ってしまったがために、引き返せずアメリカに乗り込んだ話をしました。根拠は1ミリもなかったのですが、受験英語ができれば会話なんてちょこっと練習したらペラペラになれると思い込んでいました。一年もアメリカにいたら、そりゃもうペラペラどころかアメリカ人みたいになれると妄想に近い幻想を抱いて生活を始めたのですが、すぐに一年くらいじゃペラペラどころか“へらへら”英語がいいところで、問題は根深いということを思い知らされました。特に苦しんだのは音声面でした。
自分の発音はなかなかいけてる!と思って、その気になって話していたのですが、周りからダメ出しをされ、だんだん話すことが恥ずかしくなってしまいました。SとSHやBとVといった子音の違いも知りませんでしたし、この世に母音でA・I・U・E・O以外存在することすらも知らなかったので、当然発音は今から思うとかなりの日本語発音。その頃に通訳訓練のシャドーイングを知っていたら、もっと効果的に音声矯正ができたかもしれません。
英語ビギナーの当時は発音でこんなに苦しむとは思ってもみませんでした。自分の母語にない音に関しては、その音が存在することをまず認識し、練習することから始める必要があります。フランス人が苦手な音、日本人が苦手な音は当然違うわけで、それぞれ練習すべき音も変わってきます。
自分が発音に苦しんでいることを知り合いになったアメリカ人に話をしたところ、彼女の知り合いでSpeech Pathologyの教授がいるから、彼女に相談してみるといいと言われました。Pathology??・・・何それ??と思いながらも連絡先を聞いて連絡を取ってみることにしました。辞書で調べてみると“言語病理学”という何とも仰々しい日本語が出てきました。“病理学”って自分の発音はそんなに重症なわけ?とちょっとショックを受けつつも、興味はあったのでとりあえず行ってみました。
面談の日に説明を聞くと、Speech Pathologyとは日本語でいう“医療言語聴覚士“のことで、生まれもって言葉を発する上で障害のある人へのリハビリ方法を研究する学問分野のことでした。外国人にアクセントがあるというのも一種のスピーチ障害と捉え、それを矯正いていくことにより、より正確なコミュニケーションを目指すのです。
特に人種のるつぼのアメリカでは、英語を正しく話せない人がたくさんいて、Accent Reduction(アクセントを少なくする)やSpeech Pathologyをベースとした音声矯正の本や講座が実際たくさんあります。
当時、ハリウッド俳優のアクセントトレーニングも手がけているというDr Alanという人の本だったと思いますが、Accent Reductionの本とテープを購入し、自分でやってみました。確かにイントネーションの違いに関しては、この手の本で十分理解できると思いますし、恐らくアマゾンでこのような本もたくさん出ているのではないかなと思いますので、興味のある方は一度検索されてもいいかもしれません。ただ細かい発音という点では、それほど有効ではないように思いました。
細かい発音に関してはSpeech Pathologyの方が有効だと思います。というのもSpeech Pathologyでは、治療という観点から、正しい音が生成できない理由(外国人の場合は、ほとんどが母語の影響が主たる原因)を分析し、その解決策が提示されるからです。同じ母国語を有する者でも、それぞれ問題の音は少しずつ違います。ですから個人レベルでどういう音が認識、発音でき、どういう音に問題があるのかを診断してもらうことは極めて有効だと思います。
Speech Pathologyのチェックを受ける前に、大学生のアメリカ人に発音を直してもらおうとしたのですが、そういう訓練をきちんと受けていないと、違うということは何となくわかっても、どうやって直して良いのかわからないと言われてしまいました。耳のいい人だと“今の音は〜と〜の中間の音だから、…の部分をもう少し強く発音したほうがいい”とか“〜の音を出すときには、舌を口の下につけたまま発音するといいとか”かなり具体的な発音の仕方まで教えられるのですが、ほとんどの人は違うかどうかしかわからないようでした。
それでは来週はいよいよSpeech Pathologyで何を行うのか、どうやって発音を矯正していったのかを説明していきます!
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