INTERPRETATION

全部聞こえたのに訳せない!なぜ?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

前回は、サイトトランスレーション(以下サイト ラ)の概略をベルトコンベヤに例えて説明しました。サイトラをやっとことのある人 であれば、イメージは掴んでいただけたと思いますが、未経験の人には「英語や通訳 の勉強とベルトコンベヤとかどう関係しているわけ???」となって終わってしまっ たような気がします。

 そこで今回は、『なぜサイ トラが必要なのか』をlisteningとcomprehensionの観点から説明をしていきたいと思います。

 某通訳学校や私の学校(Accent on Communication)で私の授業 を受けたことのある方ならおわかりだと思いますが、私は授業時間の40〜50%近くをサイトラ に費やします。このサイトラがきちんとできないとテープで2〜3文を流しただけで も、「聞いたときはわかったのに意味が全くわかりません!」と言う生徒さんが続出 してしまうからです。その時、ほとんどの方が「記憶力(retention)かメモ取り (note-taking)ができないから通訳ができない」と言うですが、 一緒にスクリプトを見ながら理解したプロセスを確認していくと、聞いたときにわ かった!と思った一番の理由は「聞いた時知らな い単語がなかったから」ということでした。つまり聞いた時は、(必ず しも意味をきちんと理解できているというものではないが)「知っている単語ばかりで、何となくわかった ような気がした」というだけで、文字を見て意味を確認していく と実は分かっていなかったり、情報が頭の中で散漫となっていたりして通訳ができな かったのです。単語を音として認識できたという意味ではlisteningはできたというこ とになりますが、その意味を正確に理解できなかったという意味ではcomprehensionに問題があるということになります。

 音を聞いて分からなかったのだから、某教材のよ うに英語のシャワーを浴び、どんどん音を聞いて練習していかないといつまでたって も聞けるようにならないと考え、ひたすらテープやCDを聞くという一見論理的な練 習方法に走る方をよく見かけますが、果たしてこれでcomprehensionが良くなるので しょうか?単なる英会話上達であれば、ある程度耳で覚えて反射的に口からついて出 るようにするため、繰り返し聞き、耳で覚えて反応できるようにすることは有効です し必要だと思いますが、ある程度のレベルに達した方であれば英語を読む 練習を増やす必要があると思います。これには語彙を増やすという目的 もありますが、それ以上に英語の情報を文字ベースで収集することで、英語を聞いた時 に理解(comprehension)できる範囲 を広げる狙いがあり ます。これがないと英語を聞いた時にlisteningはできても comprehension までいかないとい う現象が起こり、理解したと思ったのに通訳できない!ということが起こるのです。

 多読精読の使い分けについては、またいつか機会 があれば書きたいと思いますが、通訳技術や英語力を上げようと思って読むのであれ ば、サイトラをお勧めします。一つには「サイトラで読み下していくことで、読める 量が増え、収集できる情報量も格段に増えるから」と、もう一つには前回もお話をし ました「英語のロジックを正しく理解・習得できるメリットがあるから」です。です からある程度の英語力まで引き上げたけど、まだ通訳できるレベルではないとか、英 語力が最近伸び悩んでいるという方は是非このサイトラをうまく活用して頂きたいと 思います。具体的なサイトラに関しては来週ご紹介して行きたいと思いますので、お 楽しみに!

 今後、取り上げて欲しいトピック、英語や通訳の 勉強方法やこのコラムに関する疑問や質問、逆にこういう勉強方法や教材が良かった という情報でも何でもいいのでメールもらえると嬉しいです。

 それではまた来 週!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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