目的語のない日本語
最近いろいろと翻訳業務をしていて気づいたこと。それは「日本語の目的語に対する意識が低い(もしかしたらほぼない!)」ということです。
よく、「日本語は主語が省かれるからわかりにくい」という言葉を耳にします。この言語的な文化はずーっと昔からあったのでしょう。高校の(嫌いな)古典の授業で、主語がたくさん省略されていて、敬語の使い方で主語を区別しましょう、と教わっていたのを思い出します。
しかし、現代語では主語が省略されていたとしても、正直そこまで翻訳に困ったことはありません。そもそも主語が省略されるのは、隠された主語が明確な場合が多いからです。
日本語を勉強されている外国の方なら難しいと感じるかもしれませんが、日本語を母語とする方々にとってはそこまでネックにはならないのではないでしょうか。
難しいのは「目的語」です。
そもそも「目的語」と聞いてすぐに何のことか答えられる中高生は案外多くないのではないでしょうか(この記事の読者さまでしたら常識かもしれませんが)。
「主語」と言われれば何のことかは小学生でもわかります。しかし「目的語」は意外としっかり教えられていないのではないかと、自分の学生時代を振り返ると、感じます。
そのせいか普段翻訳するビジネスメール、文書、会議資料の中には、目的語が無い文章が散見されます。
日本語でさらっと読むと見逃しがちですが、英語に翻訳してみると「えーっと、ん?この動詞の次にくる目的語はなんだ…」となることがしばしば。
例を出します。最近翻訳をした文章と同じような構造をした日本語の文です。
「このエクセルシートは、今後本プロジェクトを進めていくにあたり、様々なタスクがタイムラインとして明確に共有される必要があるので、指針としてまとめたものになります。」
まず日本語が読みづらい、ということは一旦置いておいて。「なにをまとめるんだ…?」という目的語が抜けてしまっている(もしくは違う形で目的語としての機能を担っている言葉がある)ので、きちんと読んでまとめれば翻訳はできますが、何も考えないで翻訳をしていると一瞬立ち止まってしまいます。
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