INTERPRETATION

東大の英語問題に挑戦〜後編〜

HAJI

英語のツボ

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問. 次の文章には、文法上、取り除かなければならない語が一語ある。それはどれか。
Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.
(東京大学2010)
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さて前回の記事では、関係詞whichの後ろの文章の構造は不完全なものになる、と解説をしました。
今回はその続きから、答えにたどり着くまで解説をしていきます。

whichの後ろは不完全な構造になる、ということですが、東大の文章をみるとどうなっているでしょうか。
Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.

ここでもう一つ、東大らしいといいますか、さらに考えさせるためのトリックが隠されています。
いまwhich以下の文章をみてみると、今度は受動態になっています。そこで次のテーマは「受動態は完全な構造か、不完全な構造か」ということです。

実際に受動態を作って考えてみましょう。まずは普通の文章(能動態)です。
能動態:Everyone loves her.

次にこれを受動態にします。
受動態:She is loved by everyone.

ここであまりにも自明のことを問いますが、能動態を受動態にするにあたり、具体的にどのような作業をしたでしょうか。
それは「目的語を主語にする」という作業です。いま、能動態における目的語はherで、それをsheという主語に変えることによって、受動態が完成しました。
裏を返せば「目的語が無ければ受動態にはできない」ということです。さらに言えば「(目的語も主語もきちんと存在するので)受動態は常に完全な構造をしている」ということができます。

さて、いままで以下2つのことを導きました。
whichのあとは不完全な構造の文章になる。
受動態は常に完全な構造の文章になる。

ここで東大の文章に矛盾が生じます。なぜなら①のポイントと②のポイントが同時に見受けられるからです。

ここから答えの核心に入ります。

この矛盾を解消するためには、実は関係詞を変える必要があります。

いま東大の文章において、関係詞はwhichのみが存在していますが、これをもう少し違った視点でとらえていきましょう。

例えば、
This is a house which he lives in.
という例文があったとします。このとき、whichの後ろの文章はinの後になにもないので(=目的語の欠落)不完全な構造になっています。

英語の得意な方はご存知だと思いますが、これを以下のような文章に変えることもできます。

This is a house in which he lives.

中途半端に存在していた前置詞inを、whichの前にもってくることができるわけですね。
高校の英文法では、これを「前置詞+関係詞」のような形で呼ばれることが多いかと思います。
ちなみに、こういった表現は一般にフォーマルな文章に見受けられます。

ここで注目してほしいのは、in whichの後の文章は完全な構造になっていることです。先ほどの中途半端な前置詞inが消えたので、完全な構造へと変身したのです(liveは自動詞です)。
これを東大の問題に応用することができます。

Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.

whichの前後を見てみると、なんだか「前置詞+関係詞」の形に持っていけそうな気がしませんか?
そうです、aboutがあります。aboutとwhichをセットとしてみると、about+whichという「前置詞+関係詞」の形が見事に完成します。

これでようやく答えにたどり着きました。
結局、正しい文章は以下のようになります。

Discovery is not the sort of process about which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.

*本記事はあくまでも個人の意見であり、科学的な根拠をもとに事実を示しているわけではありません。

Written by

記事を書いた人

HAJI

国際教養大学卒業後、COWプロジェクトメンバーとして入社。大学時代を社会学を専攻し、アメリカに留学。ジャズが大好きで、アメリカのジャズ拠点をフィールドワークしたことも。
現在は目標とする先輩の通訳者のようになれることを目指して日々奮闘中。

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