東大の英語問題に挑戦〜前編〜
さて今回は少し趣向を変え、受験時代に戻りましょう。
東京大学の英語の文法問題を通し、普段あまり気づかないような英語の言語構造的な側面に光を当てていきたいと思います。
早速ですが、次の問題を解いてみてください。
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問. 次の文章には、文法上、取り除かなければならない語が一語ある。それはどれか。
Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.
(東京大学2010)
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いきなりこんな文章を出されても文脈が見えないし、何より通訳は前後の文脈と資料が命!と思われるかもしれませんが、今回は純粋に高校生に戻ったつもりで、文法問題を解いていきましょう。
いかがでしょう。「なんか違和感は感じるけど、どこが具体的に間違っているのかわからない…」という方が多いのではないでしょうか。
英語は言語ですので、ネイティブにとっては「なんとなく」で解けるかもしれませんが、折角ですからどこが間違っているのか、言語の構造を明らかにしながらゆっくりみていきましょう。
以下、解説がはじまりますので、その前に自分で問題をよく考えたい、という方はここでストップしてくださいね。
<解説>
今回着目をしてほしいのは、以下アンダーラインの部分です。
Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.
つまり、いわゆる関係代名詞と呼ばれるwhichという単語の、後ろの文章に着目をするということですね。
ここで関係代名詞のwhichを含む例文を色々と考えてみましょう。
例えば、以下のようなものはいかがでしょうか。
・This is a letter which was sent from my girlfriend.
(これは彼女から送ってもらった手紙だ。)
・The book which he borrowed turned out to be very useful.
(彼が借りたその本は、とても役に立つものだとわかった。)
ここで着目をしてほしいのですが、関係詞whichの後はどのような文構造になっているでしょうか。
・This is a letter which was sent from my girlfriend.
・The book which he borrowed turned out to be very useful.
太字斜体の部分を見てみると、”何か”がそれぞれ欠落しています。
上の文章の場合は、明らかに「主語」が欠落しています。
そして下の文章の場合は、いわゆる「目的語」が欠落しているのです。
少しだけ文法用語を説明しますと、目的語というのは文字通り「動詞の目的になる言葉」です。
動詞は大まかに自動詞と他動詞に分けることができ、自動詞は目的語を必要としない語、他動詞は目的語を必要とする語、のことです。
非常にシンプルにまとめると、その動詞を聞いたときに「なにを?」と聞き返したくなるのが他動詞というところでしょうか。
例えば、「私は食べる」と言われたら「何を?」と聞き返したくなります。ですので、食べる(eat)という動詞は他動詞ということがわかります。そして「何を?」の部分に対して答える名詞が、目的語と呼ばれるものです。
「私は納豆を食べる」という文章であれば、納豆が目的語ということになります。
反対に、「私は走る」と言われたら別に「何を?」とは聞き返しません(というよりも「~を」という質問を投げかけること自体が不自然です)。ですので走る(run)は自動詞であることがわかります。
話が脱線しましたが、先ほどの2番目の文章(The book which he borrowed turned out to be very useful.)に戻ると、he borrowedというのは「彼は借りる」という意味ですが、「何を?」と聞き返したくなりますよね。
ですので、borrowという単語は明らかに他動詞ということがわかりますが、その次にあるべき目的語がありません。
こういった理由から2つ目の文章もwhich以下は不完全な構造をしているとわかります。
このように、一般的に関係詞whichの後ろは、不完全な構造を取るのです。
ここでもう一度今回の東大の文章を見てみましょう。
Discovery is not the sort of process about finding which the question “Who discovered it?” is appropriately asked.
さて、この文章の場合はwhich以下がどうなっているでしょうか。今回はここまでがヒントになります。次回は答えに辿り着きますので、それまで是非考えてみてくださいね。
*本記事はあくまでも個人の意見であり、科学的な根拠をもとに事実を示しているわけではありません。
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