進化し続ける読書法(その3)
前回のコラムでは、本の具体的な読み方について5点、ご説明しました。
今回はその続きです。みなさんの読書ライフの参考になれば嬉しいです。
(6)つまらなかったら読むのをやめる
この考えを初めて知ったのは、乳がんで亡くなったジャーナリスト・千葉敦子さんの著作を通じてでした。千葉さんは再発する乳がんに見舞われながらもフリーランスのジャーナリストとして、おもに日本に関する話題を海外の新聞や雑誌に精力的に寄稿していました。当然、ジャーナリスティックな記事を書くためにはたくさんのインプットが必要です。そのため、千葉さんは日ごろから大量の文献を英語・日本語を問わず読んでいたのでした。その読書方法としてはとにかく自分で書店で見て購入すること、ただしどんなに大枚をはたいても「つまらない」と思ったら、迷わず読むのをやめるというものだったのです。
誰にとっても一日は24時間。ましてや病身の千葉さんにしてみたら時間はまさに有限です。ダラダラと読み続けるのではなく、ときには潔くruthlessになることの必要性を当時の私は感じました。以来、たとえ高額の書籍であっても読破しなくてもいいと考えるようになっています。
(7)本は朝イチで読む
ヒルティの「幸福論」に次のような一節があります。
「毎朝、最初の一番よい時間をまず一二の新聞でつぶす人たちは、その日一日の正しい仕事の興味を失うことになる。」(ヒルティ「幸福論」岩波文庫)
私は職業柄、朝一番に新聞を読むのがいわば「おつとめ」です。しかし、ヒルティの言い分もよくわかります。なぜなら朝は一日の中で一番頭が冴えていますし、今日一日を頑張ろうという前向きな気持ちになっています。そのような中、社会の諸事件や重い問題を目にすることは気持ちを暗くさせてしまうこともあるわけです。ですので、仕事がない日などは早起きした際、まずは本を読むようにしています。
最近は「朝活」なる言葉がお目見えするなど、朝型の人間が増えており、様々な講座も開催されています。朝は集中できますし作業もはかどります。読むスピードも夕方と比べて格段に速いのです。そうした中、書物からインスピレーションを得ることはとても大事です。
(8)寝る前は軽めの本を
朝であれば多少難しい本でも冴えた頭には入ってくるでしょう。しかし夕方以降というのは体力的に疲れているもの。とりわけ寝る前は疲労のピークがありますので、なるべく軽めの本を読むことをお勧めします。エッセイや写真集でも良いですし、フリーペーパーなどもunwindする上では大いに楽しめます。体を休め、翌日に気持ち良く目覚められるよう、寝る前のリラックスタイムはとても大事です。
(9)感動したら著者へ手紙を
感動した本に出会ったら、ぜひ著者に手紙を出すことをお勧めします。私が初めて著者に本の感想を書いてポストに投函したのは小学4年生のときです。当時父の仕事の都合でイギリスに暮らしていたのですが、今と違ってインターネットなどなく、船便で親戚から送られてきた児童書を日本人の友人たちと回し読みしながら日本語を吸収する、そんな生活を送っていました。そのとき読んだ本が児童文学者・砂田弘さんの作品です。「さらばハイウェイ」「二死満塁」など大いに感銘を受けてお手紙を差し上げたところ、直筆のお返事をいただいたのです。日本語に飢えていた私にとって、直筆のお手紙は本当にうれしかったのを今でも覚えています。
最近では著者もウェブサイトをお持ちのことが多いので、そちらに感想を直接書くことももちろんできます。私自身、イラストレーターの上大岡トメさんや脳学者の池谷裕二さんにサイト経由で感想のお手紙をお送りしたところ、すぐにご丁寧なお返事をいただきました。
もっとも私は手書きの手紙を書くこと自体が好きなので、最近はあえて編集部経由でお手紙を差し上げています。編集部の方にとっても、読者からの反応は今後の出版方針に大いに参考になると考えているからです。
(10)書籍巻末や折り込みの新刊案内もチェック
たとえば新書の場合、巻末にはその本と同分野の書籍がPRされていることがあります。同じトピックについてもう少し理解を深めたいという時に参考になりますので、ぜひチェックしてみてください。また、本の中には「今月の新刊案内」といったチラシもはさまれています。その出版社がどのような本を出しているかがわかりますし、まったく興味のなかった分野の本でも、そこに掲載されている紹介文を読んでみて関心が高まることもあります。
私はそうした情報を得たら読みたい本のタイトルを手帳に書き込み、書店に出向いた際、実際に手にとって買うようにしています。最近はアマゾンのようなネット書店がとても便利ですが、やはり自分の目で見てパラパラとめくってみてから買うというのも楽しいものです。
以上、2週にわたって読書に関する10の項目をお伝えしてきました。私自身、本との関わり合いはこれからも続きますし、もっともっと変化・進化していくと考えています。書籍というのは人の人生を豊かにしてくれるものです。それを信じて、これからも読み続けたいと思っています。
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