INTERPRETATION

社会人こそ学びを

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 4月に通訳学校の新学期が始まったと思ったらもう8月。そろそろ前期授業の終わりに近づいています。今年は通訳学校の指導のほか、英語学習アドバイスに関する大学教員向けワークショップを担当するなど、私自身、指導や講演が続いた上半期でした。

 ただ、ここ数カ月、そうしたアウトプットと独学インプットが続いていたので、自分自身が「教わる立場」になりたいという気持ちも募っていました。そこで7月から8月にかけて大学のオープンキャンパスを訪ねてみました。

 近年、国公立を問わず、夏以降にオープンキャンパスを開催する大学が増えています。これは少子化ゆえに受験生が減り、大学側も優秀な学生を少しでも多く獲得したいという思いから来ているためです。キャンパスツアーや公開授業を催すほか、中には学食無料体験などといったイベントもあるようです。

 私が参加したのは某国立大学大学院の英語ゼミ。公開授業とのことだったので出かけてみたところ、外部参加者は私一人だけでしたが、言語学に関する密度の濃い授業を聞くことができました。もうひとつは外国語学部が有名なとある私立大学で、英文法に関する学部生向け授業と国際政治学のレクチャーを聴いてきました。

 オープンキャンパスなので参加者のほとんどは高校生でしたが、中には社会人入学を考えている人の姿もありました。教授陣も通常の授業さながらのレクチャーをしてくださり、受講した私にとって大いに刺激となる内容でした。

 大教室に座り、先生方の話に耳を傾けながら思ったこと。それは「こんなに素晴らしい授業がたくさんあったのだから、大学生の時にもっと真面目に勉強しておけばよかった」ということでした。当時の私と言えば、恥ずかしながら居眠りや内職などをして「とりあえず出席だけして単位はもらおう」という不真面目女子大生だったのです。

 とはいえ、今、こうして社会人になったからこそ、授業内容に共感するものがあったり、先生方のプレゼンテーションそのものにヒントを得たりということがあったのだと思います。

 社会人こそ学びを意識すること。今の時代は通信講座や夜間の大学院修士課程など、学ぶチャンスはたくさんあります。そうした機会をとらえてたくさんの社会人が学びの素晴らしさを感じ取っていければと思います。

 

(2010年8月9日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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