INTERPRETATION

学ぶ上での基本的姿勢とは

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 昨年春から始めたフランス語学習。当初は「仏検5級突破」という目標を設定し、NHKのラジオ講座を軸に進めていきました。秋以降は独学方法を変更し、通信講座を受講しています。私が取り組んでいるのは「公文式」のフランス語講座です。

 そもそも公文式を考えた理由はいくつかあります。まず、現在の自分のスケジュールを見る限り、フランス語学校への通学は難しいことが一つ。個人的には、語学は定期的に学校に通い、学校をペースメーカーにすることがベストだと考えているのですが、通訳業務や子どもたちの学童・保育園のお迎えなどを考えると、なかなか自分に合った講座はなかったのです。本当は学びの場で先生の指導を仰ぎ、ほかの受講生から刺激を受けることができたらと思っていたのですが、「通学する」というオプションは難しいと感じていました。

 公文式にしたもう一つの理由。それは「長男を通わせる前に自分が学んでみる」というものでした。実はこちらの理由のほうがとても大きかったのです。というのも、現在小2の息子は、1年生の後半ごろから算数を敬遠していました。本人なりに努力はしていたものの、「なぜ機械的な計算をひたすらやるのかわからない」という、まさに「取り組む意義」を見いだせずに進級してしまったのです。昨年夏、1年生の問題集を復習してみたところ、なんと繰り上がり計算でつまずいていたことが判明。「9+4」のような、答えが10以上になるような問題ができなかったのでした。

 公文の評判は色々と聞いていたのですが、はたして息子の性格に合うかどうかわかりません。そこでまずは母親である私が公文のフランス語講座を受講してから息子に勧めようと思いました。フランス語講座は通学・通信両方ともありますので、通信学習を希望していた私にはぴったりでした。

 受講を始めたのは昨年10月末。取り組み始めてから数日にして、この講座の素晴らしさを私は実感することとなります。A5サイズの小ぶりなプリント教材は一日10枚取り組むようになっていますが、非常に細かいステップに分けられており、自分が少しずつ理解を深めて上達していることが目に見えてわかるのです。さらに、「毎日取り組むこと」「何度も書いて覚えること」「声に出すこと」「学習時間を記録すること」など、語学学習における基本中の基本が繰り返し提示されています。これなら息子にも合うと私は確信しました。

 こうして息子は近所の教室で算数と国語を、私はフランス語の通信学習をと親子そろって毎日教材に取り組んでいます。息子のほうはあれほど苦手だった算数も今ではスラスラと解けるようになり、大喜びです。親子で励まし合いながら学び続ける大切さはもちろんですが、それ以上に、「学ぶこと」の基本的姿勢、つまり「毎日続ける」「反復する」ことが結局は最も大事であることを私は感じています。

 (2010年1月18日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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