INTERPRETATION

ハーフマラソン出場へ

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 このコラムがアップしているころ、私はハーフマラソンに出場しているはずです。昨年秋に3キロマラソンに出て以来、走ることに魅了されて今回のエントリーとなりました。去年はとりたててトレーニングすることなく本番で走ったのですが、周りのランナーたちの存在や沿道からの声援など、「自力で走ってゴールすることの素晴らしさ」にすっかり魅せられてしまったのです。こうした理由から、「2009年秋の同じ大会ではハーフに出てみたい!」と思うようになりました。

 ただ、「出たい!」という意欲があっても、具体的な計画がなければ完走することはできません。ハーフと言えば、21キロです。東京から成田空港までが片道60キロですから、その3分の1の距離を走り続けなければならないのです。そこで具体的な対策を考えることにしました。

 まず今年の元旦に「ジョギングを年内100回」「1日1万歩を年内100回」という数値目標をたてました。これは「毎日走る」「毎日1万歩」としてしまうと、実行できなかった日を後悔することになり、後悔すればやる気も失せてしまうと考えたからです。けれども1年は365日ですから、たとえ3日に1回であっても100回であれば何とか年内に達成できます。これで心理的なハードルがかなりさがりました。

こうして1月から少しずつ走ったり歩いたりという自主トレーニングを始めたのですが、それまで5分も走れば息切れしていた私も少しずつ走る距離と時間を延ばせるようになりました。そのうちに「早朝ジョギング=ポッドキャストを聞く貴重な時間」となり、自分の勉強タイムに充てられるようになったのも大きな副産物でした。朝日を浴びながら好きな番組を聞き、季節の移り変わりを感じながら1日のやる気を高める。これが私の生活の一部となっていったのです。

しかし、本番当日まで順風満帆で来たわけではありません。実は今から2週間前に少し風邪気味になり、一気に疲れが出てしまったのです。それまでは「あと10日で本番だから今日は60分走る!」などとやる気満々でいました。ところがいったん体調不良になるや、走るのも億劫、ストレスで食べすぎて体は重くなるなど、どんどん「やる気失墜スパイラル」に陥ってしまったのです。しまいには「21キロ連続で走る練習をしない私は、たぶん完走できないだろう」「周りに『ハーフマラソンに出る』と宣言したものの、途中リタイアしたら恥ずかしい」などと要らぬ心配をする始末。こうなると本当に辛くなります。こんな心理状態が2、3日続きました。

このあと私がとった行動。それは家族に私の本音を聞いてもらい、慰めたり叱咤激励してもらったりしたことでした。私は毎日走った時間をメモしてきましたので、その記録を見直しもしました。そして私なりに出した結論、それは「どんな結果になっても構わないから、とにかく本番まで練習は続けよう」というものだったのです。私はとにかく毎朝走り続けました。

「走り続けることから生じた悩み」ではありましたが、走り続けることによって何とか吹っ切ることもできました。初めてのハーフマラソンですから、緊張するのは当たり前です。でもその緊張感に押しつぶされるのではなく、それにどう真正面からぶつかっていくか。今回のマラソンは私に教えてくれたように思います。

 

 (2009年11月23日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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