INTERPRETATION

デフォルト・メニュー

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 デフォルトとはパソコン用語で「初期設定状態」を意味します。たとえばワードを立ち上げると、自動的にA4サイズの設定で表示されます。余白の幅、フォントや文字の大きさなど、あらかじめ決まった状態で画面には出てきますので、自分のPCがどういうデフォルトなのかを知っておけば、いちいち設定し直さずに済みます。

実はこの「デフォルト」という言葉、いろいろな場面で応用されているようです。以前、私がPC関連以外でデフォルトという言葉に遭遇したのは、フィットネス番組のポッドキャスト。食生活に関する特集が流れていました。その中でdefault menuやdefault foodという表現が使われていたのです。この番組のキャスターによれば、「忙しい日々を送る私たちにとって、あれこれ悩む時間はもったいない。『これさえあれば大丈夫』という食事メニューをあらかじめ作っておくとよい」とのことでした。

なるほど、と思った私は、さっそく実践することにしました。たとえば我が家の場合、朝食にフルーツヨーグルトと野菜スティックを必ず出すのですが、毎朝その都度作っているのは何かと煩雑です。そこで私は数種類の果物をあらかじめカットして、容器に入れることにしました。あとは毎朝小皿に容器から出し、ヨーグルトをかければフルーツヨーグルトのでき上がりです。一方、野菜スティックは人参ときゅうりを少し多めに棒状に切って、容器に入れておきます。朝、家族分に取り分ければ、栄養バランスも良くなります。ちなみに私の場合、朝一で噛み応えのある野菜スティックを食べると、頬の筋肉が鍛えられるような気がしています。

我が家にはこれ以外にもデフォルト・メニューがあります。最近の定番は「蒸し野菜」。買ってきた野菜は冷蔵庫に入れる前に、どんどん蒸し器でゆでてしまうのです。以前はお鍋でおひたしを作っていたのですが、たとえばほうれん草をゆでた後にオクラをゆでようとすると、ほうれん草のアクでお湯が使えなくなってしまい、その都度お湯を取り換えていました。けれども蒸し器を使えばお湯自体に食材を浸すわけではないため、どんどん連続でゆでることができます。これも時間節約につながります。なお、蒸した野菜は冷蔵庫に保存して、食べる際にレンジで温めます。このため、蒸し器でゆでる際には少し硬めにゆでておくとよいでしょう。

他にも、干しシイタケをジャムの空き瓶に入れて水を注いでおけば、いつでもだしが取れますし、焼き海苔も小さくカットして容器に乾燥材と一緒に入れておけば、すぐにおにぎりに巻くことができます。我が家はゆで卵も多めに作って常備しており、小腹が空いたときなどに重宝しています。また、ゴマはすり鉢・すりこぎとセットで収納しているため、パッと取り出してすぐすれるようになりました。以前のように「ゴマをするのが億劫」と思うこともなくなり、ゴマが食卓に出る回数も増えています。

こうした「デフォルト・メニュー」のおかげで、「夕食を作る時間がない!」という時でも、とりあえずお鍋にシイタケだしを入れ、蒸し野菜を投入してお味噌を溶けば立派なお味噌汁ができ上がります。野菜が足りない日も、蒸し野菜をレンジで温めてドレッシングをかけ、ゆで卵を添えれば、一品が完成します。

ほんの少しの準備でできる「デフォルト・メニュー」。忙しい方にオススメです。

 

 (2009年10月26日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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