INTERPRETATION

次なる目標を模索中

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 9月末でNHKラジオ「まいにちフランス語」の前期分が終了しました。

 この半年間、生放送に耳を傾けたり、カセットに録音したり、またはウェブのアーカイブで視聴したりなど、何とか一日も欠かさずに続けることができました。春ごろはフランス語学習熱があった分、私のライフサイクルの中でも「フランス語」の位置付けが高く、特段の努力をしなくてもラジオを聴くことは容易でした。

 しかしその後、当初の「片思い状態」が落ち着いてくると、放送時間に合わせて聞くことがむずかしくなり、カセットテープやウェブを通じて「何とかしがみつく」状態になってきました。私の日常生活においては他のことが優先されるようになり、少しずつ少しずつ、フランス語の位置付けがトップから2位、3位へと転落していったのです。その理由は、ひとえに「今、フランス語を学ばなければ、生活していけない」という状況ではなかったからだと思います。逆を言えば、「これをやらなければお給料がもらえない!」という状態だと、人間というのは本気になると思うのです。英語学習者で伸び悩みを感じていたり、勉強法の悩みを抱いている人は、もしかしたら仕事上の必要性がさほどないからなのかもしれません。

 しかし、「必要がないからやめる」「飽きたからもうそろそろ終了しよう」と思うことは簡単です。他の優先項目が出てきたのであれば、今やっていることを削って新しいことに着手する必要もあるでしょう。一番時間がもったいないのは、「新しいことをやらなければ」と思い悩みつつ、古いことを捨て切れない状態だと私は考えます。

 何かを捨てること。それはモノであれ、今までの習慣であれ、大きな勇気が必要です。一時期「『捨てる!』技術」という本がベストセラーになりましたが、結局のところ、私たちはそれまで所有していたものを捨てることに大いなる抵抗感を抱いてしまうことが明らかになっています。だからこそ、いつの時代になっても「片付けノウハウ」や「収納術」といった書籍や雑誌の特集が売れ続けるのでしょう。

 翻って私はというと、幸いなことにフランス語そのものへの興味は続いています。しかし、来春以降、このままNHK講座を続けるか、何か新しい道のりを探るかを今考えているところです。NHKの講座はいずれも半年でワンクールとなっているので、ある一定のレベルまで行ったあたりでシリーズが終了してしまうのです。

 仏検4級は来年夏の受験を考えています。そこに照準を定めつつ、ラジオ講座を続けるか、放送大学の学部課程でフランス語の単位を取得するか、フランス語の専門学校の通学あるいは通信講座を受講するか、今、迷っているところです。

 (2009年10月5日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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