INTERPRETATION

恐れずに軌道修正を

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 GWも終わり、通常の日々が戻ってきました。今回のGWで私が心がけたこと。それはこれまでのペースをなるべく崩さず、その一方でゆっくりと休み、充電することでした。具体的には、ジョギング、一日一万歩、フランス語学習という3つの課題を、なるべく中断せずに続けることでした。

 幸いどれも滞ることなくこなせたのは、おそらくそれまでの「継続の習慣」があったからだと思います。ジョギングと一日一万歩はすでに今年1月から始めていましたので、自分の生活の一部となっています。ですので、あとは4月から始めたフランス語学習をどれだけ失速せずに続けるかに集中すればよかったわけです。

 何かを継続する上でキーワードとなるのは「3」という数字だそうです。つまり、3日続けられたら、3週間を目指す。それもクリアできたら3か月、そして3年という具合で続けていくというわけです。心理学では「21日間継続すれば、それは自分の生活の一部となる」とも言われています。私のフランス語学習の場合、4月末までの一ヶ月間、学習日で言うならば20日強ということになります。

 しかし、順風満帆でフランス語を毎日勉強してきたわけではありません。NHK講座に関しては多忙ゆえ途中で追い付けなくなってしまい、リアルタイムで放送を聞くことができなくなりました。また、15分という短い放送時間において、私が予想していたほど反復練習が番組中にないため、「はたしてこのまま聞き続けるべきか?」と思い始めたのも事実です。学習において、こうした「迷いの気持ち」が出て来ると、学習意欲や緊張感は下がってしまいます。私もそうでした。

 そこで私は「すべてを止めるのではなく、現状維持しながら新たな学習法を探そう」と思いいたりました。具体的には「新しい問題集の購入」です。大型書店へ出かけ、反復練習がたくさんある教材を探したところ、「トレーニングペーパーフランス語教養課程文法中心学習1」(ニュートンプレス)を見つけたのです。CD付きの本誌をパラパラとめくってみると、反復練習が非常に多く、そのまま書き込めるようになっています。早速購入し、週5日を学習に充てる計画を作り、実行し始めました。

 始めてみたところ、たくさん声に出して問題を解く仕組みになっており、まさに私が求めていたものとぴったりの内容です。俄然やる気が出てきました。それと同時に、いったん失速したラジオ講座もやはり継続しようと考えたのです。現在私は「トレーニングペーパー」を中心に学んでいますが、NHK講座も聞いています。これまでラジオ講座にかけていたウェイトを問題集に移すことによって、バランスがとれるようになったと感じています。

 大切なのは、もし今の教材で不安や疑問が出てきたら、いきなり投げ出すのではなく、代替策を考えながら続けることでしょう。いったん「これをやる!」と決めてから軌道修正をするのは大変ですが、それを恐れずに微調整を続けることこそ、継続に結びつくと私は考えています。

 (2009年5月11日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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