INTERPRETATION

すぐ取りかかるためのちょっとした工夫 

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 ここ数週間でめっきり暖かくなり、いよいよ春がやってきました。書店にはNHKの語学講座テキストも並び、何か新しいことに挑戦したい人にとって、格好の季節となりました。私は2009年中に達成したい目標として、「1万歩を歩く」ことを100回、「ジョギング」を100回行うことをめざしています。幸い何とか続けることができ、3月現在でどちらも35回を突破しています。心理学では21回続けることができれば、日常生活の一部に組み込まれるそうですから、私の場合、ようやく普段のルーティンの中にジョギングと1万歩突破が定着化してきたようです。

 さて、何かを続けたり、目標を達成したりするために大事なのは、「何はともあれ実行する」という一言に尽きると思います。「やりたいな」「やらなくちゃ」という、語尾があいまいなとらえ方ではなかなか先へ進みません。ダイエット同様、学ぶという行為も「やらないといけないなあ」と思っているだけでは、改善も向上もできないのです。壊れたレコードのように、いつまでも同じ場所で停滞し続けているのはむしろエネルギーの無駄だと私は思います。

 大事なのは「やる!」と決めて、とにかくすぐに実践すること。逆を言えば、実行さえしてしまえば、「やった!自分でも取り組めた!」という喜びと成功体験をまずは手に入れられます。そしてそこから同じ喜びを追求すべく、繰り返して続けていけば良いのです。最初の1回目を踏み込むまでのハードルは確かに高いかもしれませんが、何とかそこを「えいっ!」と乗り越えられれば、ゴールへの距離はグッと縮まるはずです。

 私がジョギングや1万歩突破、あるいは英語学習を毎日実行する上で工夫していることは以下のとおりです。

 (1)夜のうちにジョギングウェアを出しておく: 朝起きたらすぐにウェアに着替えられるようにするためです。玄関にはシューズもあらかじめ出しておきます。食卓にはコップを出しておき、起床したらすぐに水を一杯飲み、体全体を目覚めさせます。

 (2)万歩計を食卓に置いておく: 私の万歩計は、過去数日間の記録が本体に残される機能が付いています。私は前日の合計歩数を毎朝ノートに記しているのですが、食卓にノートと一緒に万歩計を置いておくことで、起床後すぐに記録をつけられるようにしています。記入が終わったらすぐにジョギングウェアのポケットに入れて、歩数カウントができるように準備します。

 (3)仕事関連のものは食卓に出しておく: 私は専用の仕事部屋も勉強机もなく、仕事準備も原稿書きもすべて食卓で行っています。このため、前日の夕食後、お皿を片付け、テーブルをきれいにふいた後、PCと仕事の資料をすべて広げて就寝します。このようにしておけば、起床後すぐに仕事に取りかかれます。

 他にも色々と私なりに試行錯誤を経てルーティンの中に組み込んだものがありますが、代表的なものは上記の3点です。とにかく大切なのは、すぐに取りかかれるようなセッティングをすることだと思います。「やらなくちゃ」と思っているのであれば、「やる」ためにどういった具体的行動が必要なのか、考えてみてください。それが具体化すればするほど、取りかかりやすくなるはずです。

 春は学びの季節。新しいことにチャレンジする時期です。お互い、やる気を高めてがんばりましょう!

 (2009年3月30日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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