INTERPRETATION

自分のタイプに合わせた勉強法を

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 ダイエットにしても英語学習にしても、巷には実にたくさんのハウツー本があふれています。現にネットで「英語 学習法」と検索をかけてみたところ、100万件近いヒットになりました。すごいですね。

 これだけ色々なやり方が公開されているのであれば、きっと自分に合った勉強法というのは必ずあるはずです。けれどもそれでもなお、「先生、どういう勉強をしたらいいですか?」という質問が後を絶ちません。通訳学校においても、あるいは単発で行うセミナーなどの場においてもです。それだけ皆さんが最適な学習法を求めてさまよっているのだろうなという印象を受けます。

 では、どういうやり方をすればいいのでしょうか?私が考える最適な学習法、それはやはり月並みですが、「目標の設定」「期限の設定」「日々の課題」の3点に絞れると思います。これは営業関連の本でもダイエット本でも述べていることであり、結局のところ、目標と締め切りを考え、具体的な課題を考えることで初めて人間は行動を起こせることの表れなのだと私は考えています。

 言いかえれば、ただ漠然と「通訳者になりたい」というだけでは勉強は長続きしないのです。「フリーランスの通訳者になる」「今の会社にあと1年勤めて、来年の4月には必ず通訳デビューする」「そのためには英語力のアップとエージェントを開拓する」というように、具体的にやるべきことを細分化するわけです。ただ「痩せたい」と言ってもなかなか体重が減らないのと同様、ただ英語がうまくなりたいという気持ちだけでは、語学力の向上は見込めません。気合いを抱き、目標に向かってまい進できるような方針が必要になってくるのです。

 ところで勉強法については、「直線型」か「曲線型」に分けられると私は思います。たとえばみなさんの場合、最寄り駅までのルートはいつも同じですか?それとも「今日はこっちの裏道を通ってみよう」と時々変えていますか?あるいはお気に入りのカフェで頼むメニュー、いつも同じカフェラテですか?それとも日によってカプチーノにしたり紅茶にしたりしていますか?前者であれば直線型、後者なら曲線型です。つまり、「これ」と決めたらコツコツとやるタイプが直線型であり、いろいろなバリエーションをつけるのが曲線型ということになります。

 

 直線型の場合、勉強法も「これ」といったん決まればそれをコツコツと進めることができるでしょう。一方、曲線型であれば、テキストや方法に変化をもたらした方がはかどります。ご自分のタイプを見極めたうえで自分に合った学習法を選ぶのも、実は長続きの秘訣なのです。ぜひがんばってくださいね。

 (2009年3月16日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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