INTERPRETATION

100回は続けてみる

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 今年の私は「ジョギング」を年間目標に掲げ、とりあえずなんとか続いています。ただ、私があえて自分に言い聞かせているのは、「できない日があっても、決してあきらめない」ということです。具体的には、「少なくとも100日は続ける」ことを念頭におき、走るようにしています。

 なぜ100日なのか。これは友人が取り入れている方法からヒントを得たのですが、人間というのは、何事も100回続けて初めてそれが定着化するのだそうです。その友人は英語が専門ではないにも関わらず、昨年、英語のディクテーションを必ず100回やり遂げるという年間目標を掲げていました。そして年末にめでたく達成したのです。毎日仕事で忙しい中、コツコツと続けていた姿に、私は感銘を受けました。

 「100」という数字は実にきりの良い数字です。多すぎず、少なすぎず、一年を365日とみなせば100回はこなせそうな数です。私のジョギングの場合、雨で走れなかったり、体調不良だったり、何となく気分が乗らなくて外に出られないという日もこれからはあるかもしれません。もし私が「毎日絶対に走る」と目標を掲げていたら、走らなかった自分を責めたり、「やっぱり私には続かないや」とあきらめたりするかもしれないでしょう。けれども100回であれば、3回のうち2回はお休みしてしまっても許される範囲です。「今日はできなかった。でも明日やろう」と前向きになれるのです。

 先の友人は100回を達成すべく、ブログにその記録を残していました。記し方も「ディクテーション86回、残り14」という具合です。このように数字で表し、目標数値までの数を書いていくと、モチベーションアップにつながると思います。ブログの場合、いろいろな人が見てくれるので、ますますやる気が出てくるかもしれません。

 人間というのは、一時的に何かを中断したからと言って、それまでの努力がすべてゼロに引き戻されるわけではありません。ジョギングにせよ、英語学習にせよ、もしさぼってしまったとしても、それまでの蓄積がなくなってしまうものでもないのです。私たちは、あるときは自分にものすごく厳しい課題を課してそれをこなそうと努力する一方、ひとたび「おさぼりモード」に入ってしまうと、「ま、いっか」と徐々にフェードアウトして、しまいには投げ出してしまう習性があります。

 大事なのは、中断したという事実を受け入れたら、また歩みだすことです。そうすればきっと、100回という数値目標も達成できると私は信じています。

(2009年1月12日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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