尊敬する人3名、挙げられますか?
先日、齋藤孝先生の本を読んでいて、「尊敬する人3名の名前を挙げられるか?」というくだりがありました。そういえば、就職面接などでこうした質問を聞かれたなあと懐かしく思い出します。
私の場合、自分の人生に大きな影響を与えてくれた人は何人かいます。
まず筆頭に挙げられるのが、精神科医の神谷美恵子氏。ハンセン病の研究に生涯をささげた方です。終戦直後、ハンセン病が非常に根強い差別を持たれている中、活躍しました。研究者の夫を支え、二人の子どもを育てつつ、まだまだ不便な世の中でいかに自分の勉強時間を確保し、研究を続けていくか。その涙ぐましい努力は神谷氏の「日記」(みすず書房刊)を読むと痛いほど伝わってきます。あらゆる努力を惜しまない一方、決して不満を口にせず、家族を思いやり、前向きに歩む姿には感動を覚えます。
二人目はジャーナリストの千葉敦子氏。日本で生まれ育ちながら、自力で英語力を磨き、英文で記事を精力的に書き続けました。残念ながら若くして乳がんで命を落としますが、その病をも直視し、客観的に記事として書きあげているのです。「ニューヨークの24時間」(文春文庫)や「ニュー・ウーマン」(知的生きかた文庫)などから私は時間の使い方、勉強の仕方を学びました。「書くこと」の喜びを知ったのも、千葉氏の文章からです。
三人目は、佐藤初女先生。青森で「森のイスキア」という施設を運営していらっしゃいます。悩みを抱える人たちが集い、悩みを分かち合う場所です。佐藤先生は、何か医療行為やカウンセリングを行うわけではありません。静かに相手を受け入れ、おむすびや手料理でそうした人々をもてなしているのです。イスキアを訪れた人たちは誰もが心が疲れています。そのような中、心のこもったおむすびをいただくことで、生きるエネルギーを取り戻します。命への感謝、食への祈り。私は「おむすびの祈り『森のイスキア』」(集英社文庫)に大いに勇気づけられました。
こうして改めて振り返ってみると、いずれも女性であることがわかります。そして3名とも、自分の生きる上での信念をしっかり持ち、それを一つずつ丁寧に実行された方々です。
私は自分の心に迷いが生じたときや、立ち往生してしまったときなど、この3人の著書を読み返します。パラパラとめくっていると、最初に読んだときに引いた線が目に入ってきます。当時、私が感銘を受けた文章です。そこを中心に読みなおし、元気をもらっているのです。女性が活躍すること自体、むずかしい時代だったのに、それでもあきらめずに自分の信じるところを実践していった3人の女性たち。私はそんな彼女たちから、生きる力を与えられています。
来週は、尊敬する男性についてお話します。
(2008年11月24日)
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