INTERPRETATION

私のポッドキャスト活用法

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 大変遅まきながら、私も先日i Podを入手しました。ここ数年、電車の中でイヤホンを耳につけ、i Podを楽しんでいる人をたくさん見かけてきましたが、私としてはとりたてて必要性を感じずに来てしまったのです。いえ、正確には「新しい機械を使いこなせるまでに必要な時間がもったいない」というのが本当の理由でした。

 ところがいざ使うようになってみると、これほど便利なものを今まで避けてきたのが悔やまれるぐらい、すばらしいデバイスであることに気付きました。操作も思った以上に簡単です。すでにお使いの方は十分堪能していると思いますが、私にとってうれしかったのは、好きな音楽を好みの順番に入れられること。しかもCDを買わなくてもYou Tubeからダウンロードできる変換ソフトがあり、聞きたかった曲や懐かしのメロディーなど、好きなだけ入れられるのです。リラックスしたい時に聞く曲を集めたり、「これから大変な仕事だからモチベーションアップしよう!」という時に聞ける曲などを入れたりして、今やフル活用しています。

 一方、音楽以外に大いに気に入っているのはポッドキャストです。これはお気に入りの番組を登録し、定期的に配信してもらうのですが、私は主にBBCのウェブサイトから受信しています。BBCのポッドキャストの利点は主に3つあります。

(1)生のイギリス英語に触れられること

 BBCは公正中立な報道に力を入れています。最新のニュースはもちろんのこと、科学、スポーツ、芸術など様々な番組があります。私はイギリス英語が大好きなので、今、旬の話題をブリティッシュ・イングリッシュで聞く時間は至福の時です。アメリカ大統領選挙や景気後退に関するニュースも今は盛りだくさんですので、時事英語に触れることもできます。

(2)英語表現のストックを増やせること

 英作文の力を高めたいという場合、やはり大量の英語表現を目や耳からインプットすることが大切です。ポッドキャストを聞いていると、興味深い表現が盛りだくさん。「こんな単語、初めて聞いた!」「かんたんな単語の組み合わせだけど、どういう意味だろう?」という表現がいろいろ出てきます。私の場合、ポッドキャストを通じてhandsome が女性に対しても使われることを知りました。他にもlisten out(注意して聞く)、take us through(説明してください)、better luck next time(次はがんばって)などといった日常会話でも使える表現にたくさん出会っています。

(3)番組の長さと聞くタイミングを組み合わせられること

 BBCのポッドキャストには30分の長いドキュメンタリー番組もあれば、2分ほどのミニ番組もあります。英語学習者向けに作られたGrammar Challengeや6 Minute Englishなども大いに参考になります。私は様々な長さの番組に登録しており、i Podを聞くタイミングに応じて、聞き分けています。たとえば、家から駅までの徒歩13分の間はニュース番組Best of Today(約10分)を、電車の乗り換え時間には聖職者による訓話番組Thought For the Day(約2分)に耳を傾けるといった具合です。満員電車で身動きが取れないときは長めのドキュメンタリーを聞いているのですが、興味深い内容だとラッシュも気にならず、あっという間に目的地に着いてしまいます。

 私にとってのポッドキャストは「英語学習」というよりも、「人生の楽しみを広げてくれるアイテム」となっています。

(2008年10月20日)

Written by

記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

END