INTERPRETATION

検定試験を受けよう!

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 春と秋は検定試験の季節。今春受験なさったみなさんは、そろそろ合否通知が届くころでしょう。

 私は現役通訳者になってからも、検定試験を定期的に受験することは大切だと考えています。その理由を見てみましょう。

 最初の理由。それは「受験から多くのことを学べる」という点です。「通訳学校でも定期テストがあるのに、まだ受験?」と思われるかも知れません。しかし、テスト勉強をするというのは、単なる暗記だけではありません。自分が知らなかったことを新たに学べる、またとないチャンスなのです。

 私の場合、年に数回は検定試験を受けるようにしています。こう書くと「趣味は検定」と思われてしまうかもしれませんが、実際問題、何度も受けていると、本番で上がることもなくなります。さらに試験会場で他の受験者を見ると、みな頑張っているのだなという気持ちになり、大いに刺激になります。

 また、英語関連の試験であれば、未知の単語や概念を知ることができますし、趣味の検定であれば、自分の知識をさらに深めることもできます。こうなると検定試験を活用しない手はありません。

 受験のメリット二つ目。それは「時間管理が上手になる」ことです。誰にとっても一日は24時間。忙しい毎日の中で、試験勉強の時間を捻出することは決してやさしいことではありません。しかしそこでしっかりと目標を設定し、やるべきことを逆算して計画をたて、こなしていくことこそ、学びの王道なのです。

 英語関連の試験であれば、「○○検定△級合格!」という目標をまず立てます。そして試験日までの日数を計算するのです。あと3か月あるとした場合、どうやって勉強を進めるか考えます。過去問題を一通り解く、文法が苦手であれば、文法学習を重視する、通勤電車の往復で単語を暗記するなどです。隙間時間を活用する方法はいくらでもあります。これを続ければ続けるほど、時間管理が上手になるはずです。

 検定試験を受けるもう一つの利点は、「謙虚になれること」です。いったん、現役で英語を使うようになると、「とりあえず今のままでいいか」と思いがちです。慌ただしい毎日を過ごす中、検定試験を受ければ貴重な週末もつぶれてしまうでしょう。でもそこでとどまってしまうよりも、客観的に見た自分の実力が、今どのぐらいのレベルなのか把握することはとても大切です。

 「現役通訳者である以上、TOEICで悪い点をとったら恥ずかしい」「すでに英語を教えているから、試験を受ける必要はない」と思うままでは、成長の機会を逃してしまいます。たとえ検定で不合格であっても、「なるほど、自分はこういう分野が弱いことがわかった。だったらこれからはもっと重点的に勉強しよう」と思わせてくれるのが検定試験なのです。

 間もなく夏休み。秋にもたくさんの検定試験が控えています。ぜひこの夏に何か自分に合った試験を見つけて、勉強を始めてみてください。常に上をめざすこと、それが実力アップにつながります。

(2008年7月14日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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