通訳者手配時の通訳コーディネーターの重要性
企業と通訳者の橋渡しをするのが通訳コーディネーターの主な仕事です。今回は長年通訳コーディネーターとして働いた経験を元に、仕事内容ややりがいについてご紹介します。
通訳コーディネーターは自分で直接通訳をする訳ではありませんので、必ずしも英語が話せる必要はありません。お客様と通訳者両方の要望を聞きながら調整をするお仕事になりますので、英語力よりもむしろ高いコーディネーションスキルが求められます。人と人とのコミュニケーションが好きな人にはとても向いているお仕事です。毎日たくさんの人とコミュニケーションを取りますので、一人で黙々と仕事をしたい人にはあまり向かないかも知れません。
またコーディネーターを希望する人は元々言語に興味がある人も多く、通訳をする訳ではありませんが語学が堪能です。英語力は必須ではありませんが、英語力がある人は仕事で語学スキルを活かすことができます。中には将来同時通訳者を目指して、昼間は仕事、夜は勉強に励んでいるスタッフもいます。
通訳コーディネーターの1日の流れ
通訳コーディネーターの1日はメールのチェックから始まります。クライアントから会議通訳の依頼が入っていた場合は、弊社に登録している通訳者のネットワークの中からご依頼内容に沿って最適な通訳者をアサインします。弊社は9000名を超える通訳者・翻訳者をネットワークしています。通訳者は経験によってクラス分けされており、それぞれ得意な分野があり、お客様のニーズを詳しくヒアリングしてコーディネーターが人選します。
お見積りも同時に作成します。会議内容や会議のやり方、通訳形態について詳しくヒアリングさせていただきます。なぜなら同時通訳と逐次通訳では通訳者の必要人数が違うからです。
同時通訳の場合は15分に一度交代しながら通訳をしますので、会議時間によって通訳者の人数が決まります。逐次通訳の場合は1名の通訳者で対応できる通訳時間は最長3時間になりますので、会議のやり方や会議時間を確認するのは重要です。
また会議内容の難易度によって、通訳者のレベルをご提案します。国際会議の場合は経験豊富なトップクラスの通訳者をアサインします。またオンライン会議で行われるのか、現場での通訳なのかも確認します。同時に通訳の資料等の翻訳の依頼を受ける場合もありますので、翻訳部と連携して対応します。通訳者と翻訳者は専門によって分かれておりますので、通訳者が同時に翻訳をすることはありません。あくまでも翻訳は翻訳専門のスタッフが対応いたします。
全体の通訳料金をお見積書に反映し、正式依頼になった場合は、通訳者のアサインに移ります。資料の確認や、当日の通訳環境を確認します。スピーカーの音声をどのように通訳者の耳に届けるのか?リモート通訳の場合は、イヤホンやワイヤレスイヤホンも準備します。通訳者をアサインした後は、会議当日まで資料の準備等を行い、仕事終了後はお客様からフィードバックをいただきます。そこまでが一連の流れになります。
登録スタッフとの面談
テンナインの一番の強みは9000名を超える語学のプロである通訳者・翻訳者ネットワークです。テンナインでは登録希望の通訳者は必ず一人ずつ面談しています。登録は経験者だけでなく、未経験でもポテンシャルがあり将来通訳者を目指す人は、一人ずつ通訳コーディネーターが面談しています。面接は実際にオフィスに来ていただく場合の他、オンラインでも受け付けております。また地方在住の方もオンラインで面談しています。オンライン通訳が主流になった今、住んでいる場所に関わらず地方の通訳者も大活躍されています。
登録面談ではまず弊社オリジナルのスキルチェックを受けていただきます。その後1名から2名の通訳コーディネーターが面談に入り、約1時間面談をしています。面談ではこれまでの経歴および、今後どんな通訳者を目指しているかを詳しく伺いします。通訳者とコーディネーターが将来の夢を共有することは、チームとして仕事をしていく上でとても大事なことなんです。通訳コーディネーターはある意味通訳者のプロジェクターのような役割をします。その通訳者の目標や夢がはっきりしていればしている程、私たちはその夢をプロジェクターに投影するように、新しい仕事をご紹介することができます。通訳者の夢に一歩でも早く近づけるように段階的にチャレンジングなお仕事をご紹介することができます。駆け出しの通訳者でも夢や意思が強ければ強いほど成長し、会議通訳者への道を駆け上っていきます。
面談では通訳スキルだけでなく、人柄もきちんと見極めるようにしています。通訳者は通訳という仕事がサービス業であることをきちんと理解していることが大切です。またクライアントの会議の成功のため、チームの一員として仕事ができるだけのコミュニケーション力が必要です。同時通訳では2名~4名と通訳者同時チームを組むので、独りよがりできる仕事ではありません。通訳者は一度いい仕事をするとお客様からたくさんのリクエストがかかりますが、スキルが高いだけではリクエストはあまりかかりません。人間力が求められるお仕事です。
通訳コーディネーターの重要性
通訳コーディネーターという仕事は表に出ることはなく、黒子の仕事だと言われています。どんなに会議が成功しても、「素晴らしいコーディネーターでしたね」と褒められることはほとんどありません。コーディネーターにとっては「素晴らしい通訳でしたね」という言葉が最高の誉め言葉です。
通訳コーディネーターがお客様のご要望をきちんとヒアリングし、求められるスキルを備えた最適な通訳者をアサインすることができれば、クレームがくることはありません。コーディネーターはお客様との会話の中で想像し、また必要な情報を引き出すようにします。また通訳者が求めていることを事前に察知して、お客様から聞き出すようにします。ばらばらに入手した情報は通訳者の負担を軽減するために、コーディネーター側で分かりやすくまとめて送ります。
事前情報や資料は通訳パフォーマンスを向上させるための一番重要なことだからです。どんなにスキルが高い通訳者であっても、事前に何の情報もなければ高いパフォーマンスを発揮することはできません。通訳者は必ず入念に事前準備をして仕事に臨みますので、資料は不可欠なのです。
フリーランスで働いている通訳者は仕事の手を抜くということは絶対にありません。万が一現場で一度でも失敗してしまうと、次に声がかかることはありません。通訳者は保証がないフリーランスなので、一つ一つ全力で仕事に取り組みます。いい加減なコーディネーションで依頼をしていると、通訳者はそのコーディネーターの仕事を受けなくなってしまいます。フリーランスなので仕事を受けるか、受けないか決めるのも通訳者なのです。クレームが出る場合は、コーディネーターのヒアリング不足や、説明不足の場合が99パーセントです。通訳コーディネーターという仕事は、黒子ではありますが成功の鍵を握っている重要な仕事なのです。
通訳者へのフィードバック
お客様からのフィードバックは、ポジティブもネガティブフィードバックも必ず通訳者へ伝えます。会議がスムーズに進行し、素晴らし通訳者のおかげで理解できたと言われた時、コーディネーターとしての仕事は成功です。残念ながらネガティブフィードバックをいただいた時も、率直に通訳者に伝えます。原因は通訳者にあるとは限らないので、自分自身のコーディネーションも見直し、通訳者と一緒に考えて次からそのようなことがないように改善します。通訳者がネガティブフィードバックを踏まえて改善していこうという姿勢を見た時にも、コーディネーターとしてのやりがいを感じます。
お客さまとコーディネーターの信頼関係
テンナインでは92パーセント以上のお客様からリピートでご依頼をいただきます。中には毎日大量の会議の通訳ご依頼をいただくお客様もいます。お客様と信頼関係を築くことができ、チームの一員として通訳アサインを進めていくことができた時に、この仕事の醍醐味を感じます。最初に通訳形式や、通訳を使った会議を成功させるための注意点などを詳しく説明させていただきますが、お客様が徐々にご理解いただき徐々に通訳者にとって快適な環境を提供することができるようになります。その結果通訳者のパフィーマンスを上げることができ、お客様のビジネス成功につながります。根底に信頼関係があるからこそできることです。
クイックレスポンス
通訳コーディネーターは自分が通訳をする訳ではありませんので、いくつもの現場を同時進行で掛け持ちしながら調整していきます。例えば一つの現場の通訳者をアサインしている途中に、別の企業から見積依頼や新しい会議の問い合わせが入ったりします。テンナインではお客様をお待たせしない、クイックレスポンスが重要だと考えています。時間勝負の仕事なのです。通訳コーディネーターはコミュニケーション力が必要だとお伝えしましたが、それ以外に必要なのは分散された集中力です。1つの仕事だけに集中して時間を割いてしまうと、もう一つの仕事を落としてしまいます。クライアントには大手外資系企業が多く、ビジネスを止めないスピード感が求められます。時には当日や数時間後のご依頼をいただくこともありますが、チーム一丸となってできる限り通訳者をアサインいたします。急なご依頼や難しいご依頼、今まで経験のない変わった依頼など、普通に考えたらお引き受けが難しい案件も工夫してなるべく調整いたします。最先端の会議や重要な会議に通訳者をアサインし、世の中を変える可能性がある会議にも関わることができるのが、この仕事です。
通訳コーディネーターのやりがい
コーディネーターがお客様と通訳者の間の懸け橋となって、更に良いパフォーマンスを発揮してもらえる環境を試行錯誤しながら作れた時、また双方からよい会議になったとフィードバックをもらえた時はやりがいを感じます。新規でご依頼いただいたお客様からその後リピート依頼や、定例会議のご依頼をいただいた時は、コーディネーターとしての自信にも繋がります。現場で臨場感溢れる通訳者の声を生で聞き、案件の最後に通訳者の名前が呼ばれ、会議終了後主催者が通訳ブースにお礼のあいさつに来ていただいた時は、胸が熱くなり何とも言えない感動を覚えます。
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