INTERPRETATION

日常会話に潜む、スポーツ表現

木内 裕也

オリンピック通訳

新しいプロジェクトを始める時に行われる会議のことを「キックオフミーティング」ということがあります。「キックオフ」はもともとスポーツの表現。
もしくは、「独り相撲」という日本語の表現もあります。
このように、スポーツに由来する表現が日常生活の中で使われることはよくあります。今回は、いくつかそのような表現を紹介したいと思います。

ビジネスの場で使われることがあるのは、ゴールポスト。日本だとサッカーのゴールポストをイメージしがちですが、アメリカ人などはきっとフットボールのゴールポストを想像しているかもしれません。
They’re trying to move the goalposts because they have realized that their proposal was not very strong.のように言います。
ゴールポストを動かす、ということは、ルールを変えるとか、条件を変えるという意味です。サッカーでシュートを打った後に、守備チームがゴールを動かしたらそれはフェアではないですね。それと同じイメージです。

似たように球技だと、Throw a curve ballがあります。変化球を投げるという意味で、日本語でも同じような表現をすることもあるかもしれません。想定されていないことをする、という意味。
They threw a curve ball during the presentation. I was not expecting some of their questions at all.といえば、「プレゼンでは意表を突かれた。想定していない質問があった。」の意味です。

また、The ball is in your court.もよく使われます。テニスなど、ネットを挟んだ球技を想像してみてください。「ボールがあなたのコートにある」というのは、「あなたの番」ということ。そこから転じて、「あなたの行動次第です」という意味になります。
ただIt’s your turn.といえば、単純に「あなたの番」という意味。ボーリングで「あなたの番だよ」という時であったり、プレゼンで自分の番が回ってきたときなどに使います。
しかしThe ball is in your court.というのは「あなたの行動次第」という意味が含まれます。例えば、見積もりが届いて、それにどう返事をするか。大きなミスがあって、それに関する謝罪を受けたときにどうするか。どのようなボールを相手に返すか、という様子をイメージするとわかりやすいかもしれません。

またスポーツは誰もが公平な条件下で行われるべきもの。これをLevel playing fieldといいます。「平らな競技場」という意味です。
例えば傾斜のある競技場でスポーツをしたら、ハンデが生まれてしまいますね。ですから、We have to ensure that all applicants are evaluated on a level playing field.(受験者が皆、公正な環境で評価されるように確証しなければならない)という風に言います。

気を付けるべきは、国や文化によって、また個人によって人気のあるスポーツが違う点。スポーツに理解がない場合には、言いたいことが伝わらないこともありますので、注意が必要です。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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