INTERPRETATION

ドーピング

木内 裕也

オリンピック通訳

スポーツ大会で常に話題になるのがドーピング。ドーピングをしていなくても、ドーピングの検査は大会で行われますから、それだけで話題になります。今回はドーピングに関する用語をおさらいしましょう。

まず、そもそもドーピングの基本的なルールは、WADAと略される世界ドーピング防止機構(World Anti-Doping Agency)が統括組織です。WADAが定めた、国や競技に関わらず、あらゆるスポーツを対象にした統一ルールがWorld Anti-Doping Code(WADC)です。Codeと略して呼ばれることもあります。私達がドーピングと口にする時に意味しているのは、このWADC、世界ドーピング防止規定のこと。日本ではJADA(Japan Anti-Doping Agency;日本アンチ・ドーピング機構)が統括しています。このような各国レベルのドーピング防止機関はNADO(National Anti-Doping Organizations)と呼ばれます。こう考えると、アンチ・ドーピングやドーピング防止ははAnti-dopingという英語表記が一般的に使われていることがわかるでしょう。

ドーピングについては、UNESCOも関わっています。UNESCOは「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」(International Convention against Doping in Sports)を定め、各国政府と協力しています。また、WADAやNADOは法的機関やInterpolなどとも協力して、ドーピングをスポーツの問題だけではなく、法的な問題として捉える姿勢も見せています。

ドーピング・コントロールと日本語でもカタカナで呼ばれることがある通り、Doping Controlは検査対象となる選手の選定から、実際の分析、そして聴聞会などすべてのプロセスの総称です。対象となる選手は事前に通告されることもありますが、「抜き打ち」(No advance notice)で行われることが多いです。その際、選手への通知から検体(Sample)提供まで、常に付添人が付きます。禁止リストはProhibited List、禁止方法はProhibited Method、禁止物質はProhibited Substanceです。

ドーピング検査でもしも規則違反(Violations)があった場合、様々な影響があります。一定期間に渡って競技やその他の活動への参加が禁止される「資格剥奪」(Ineligibility)、暫定的に競技や活動ができなくなる「暫定的資格停止」(Provisional suspension)、競技結果が無効になる「失効」(Disqualification)などです。しかし違反があったからといって、全てが選手の責任とは限りません。「無過失または不注意」(No fault or negligence)や「重い過失又は不注意がない状態」(No significant fault or negligence)といった立証が行われることもあります。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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